記述問題で主語がないことが多い[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6男子(性格:神経質・強気タイプ)のお母さま


質問

記述問題の主語がないことが多く、意味がわからないと指摘しても、僕はわかると言います。


小泉先生のアドバイス

採点者がどのように感じながら採点するのかをお子さまに実感させる。

記述問題における良い答案の条件とは何でしょうか? それは、ひとつには「採点者にとってわかりやすい」ということでしょう。いくら正しい答案が書けたと思っても、採点者にとってわかりにくいものであれば、思いもよらない減点を招く可能性があります。そして、1点、2点を争う入試では、それが合否を左右することにもなりかねないでしょう。

それでは、「採点者にとってわかりやすい」とはどのような答案でしょうか? 原則としては、1)文章の構造がしっかりしている、2)(指示内容を伴わない)指示語は極力使わない、3)俗語は使わない、4)比喩表現は使わない、などが挙げられると思います。どれをとっても、「わかりやすい答案」を目指すための原則です。たとえば、「文章の構造がしっかりしている」とは、「てにをは」が正しく使われているとか、「文末」が問いに一致しているということです。主語がなければわかりにくい場合が多いでしょうから、答案の中に主語も当然入れるべきでしょう。
ただし、主語がなくてもわかる場合はあります。また、字数制限が厳しいこともありますから、絶対に主語を入れなくてはいけないとは言いづらいかもしれません。そのあたりが、ご質問の中にあるように、「意味がわからないと指摘しても、僕はわかると言います」と決着が付かない原因かもしれません。

それでは、どのような基準で「主語を入れる・入れない」を考えれば良いでしょうか? ひとつの目安としては、本文は読まずに問いとその答案だけで、本文のおおよその内容が推測できるかどうかというのが基準であると考えます。答案を書いたのは本人ですから、少し言葉が足りなくてもわかるでしょう。わかりにくい答案を書いて平気でいられるのは、答案を読むほかの人を想像していないからです。詳しいことはわからない人、たとえば、本文を読んでいない人でも「問いとその答案を読めばだいたい内容が想像できる」、そんな答案を目指すべきだと思います。

さて、お子さまにはどのようにこれらのことを納得させれば良いでしょう? つまり、どうしたら「わかりにくさを実感させられるか?」ということですが、たとえば、ほかの人の良く書けた答案(これは模範解答でも良いでしょう)から主語を除いたり、あるいはわざと指示語に替えたりしてわかりにくくしたものをつくります。そして、問いとともにそれをお子さまに読んでもらって、内容が推測できたかどうか尋ねるのもひとつの方法だと思います。もちろん、本文は読ませません。その時、ほかの問いとその模範解答を読ませて、わかりにくくした問いとの差を感じさせてください。良い例と悪い例を比べてみて、採点者がどのように感じながら採点するのかをお子さまに実感させるのです。そして、悪い例の答案にはすんなりと○をつけないだろうと気づけば、自分の答案も客観的に見られるようになるでしょう。そうすれば、答案を徐々に気をつけて仕上げるようになると思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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