算数力が伸びる生活[2012年度入試で何が問われたか<算数> お子さま主導型で成長を実感できる算数 第3回]

以下は、2012年4月に開催された森上教育研究所主催「わが子が伸びる親の『技』研究会」セミナーでの宮本算数教室・宮本哲也先生の講演を抄録したものです。
ご家庭での算数の勉強に、ぜひお役立てください。



算数力が伸びる生活

●入試問題への取り組み方について
 2通りあります。一つ目は、入試に受かるための取り組み方。二つ目は、学力を付けるための取り組み方。この二つを混同しないでください。

 入試に受かるための取り組み方というのはどういうものでしょうか。
 たとえば開成中ですと、試験時間は60分で、大きな問いが4題あります。もちろん時間の制約があり、時間との戦いになります。ひとつの問題を解くのに5時間も10時間もかけるというのは許されません。ただし、こういう時間を意識した実践的な訓練というのは、小6の9月からで間に合います。早い時期から時間との戦いを意識させると、こらえ性がなくなってしまいます。こらえ性がなくなると思考力は育ちません。

 では、学力を付けるための取り組み方というものはどういうものでしょうか。
 一般的に、入試問題の演習というのは、6年生の夏休みくらいからやるものなので、現在低学年のお子さまをお持ちのかたには、入試問題を解くことなんて、はるか先のことのように思えるかもしれません。でも、実はそのようなことはないのです。入試問題の中にはすばらしい問題がたくさんあります。私には宝の山のように見えます。そのうちの何題かは低学年からでも取り組むことが可能です。

 学力を身に付けるための取り組み方というのは、「解く価値のある問題」を10時間かけて解くということです。連続10時間ということではありません。やってみてできない。また時間をおいてやってみてできない。これをくり返すのです。そうするとそのうち解けるのです。そういう取り組み方は、大手塾にいったん入れてしまうとできなくなります。次から次へと宿題が出ますから。

 良質の問題に時間をかけて取り組むということが、学力向上には欠かせません。

●睡眠学習のすすめ
 寝る時刻、起きる時刻、睡眠時間は必ず固定してください。日によってばらつきがあってはいけません。これは心身の健全な成長には必要不可欠なことです。「この問題が解けるまで寝たくない」というお子さまもいますが、9時に寝るくせをつけているのであれば、9時になったら強制終了して、布団の中に入れて、電気を消す。そうすればお子さまはたいてい寝てしまいます。そして、中断した勉強がたとえば算数だとしたら、どういうことが起こるのでしょうか。
 「どうしてもこれが解けない」という状態で寝た場合、実は寝ながら解いているのです。朝起きてからもう一度その解けなかった問題を見ると、「あれ? できた!」ということがあります。仮に答えが出なくても、考えが進んでいるということに気が付くかもしれません。そうなれば算数がおもしろくなって、どんどんのめり込んでいくはずです。

 大人の仕事にも当てはまることですが、学習の最大の動機付けは何だと思われますか? 褒めてもらえるとうれしい、そんなことではありません。「自らの成長を自分で実感すること」です。昨日までできなかったことができた! これは大人でもお子さまでもうれしいことです。そういう学習をすべきなのです。

 一般的にはやり残しをつくらないことがよいことだと思われていますが、算数の学習に関しては大きなまちがいです。やり残しはあったほうがよいのです。
 解けない問題を常に頭の未解決ポケットに何題か入れておく、そうすれば24時間、ものを考え続けられる頭になります。
 算数ができるお子さまは、みんなそういう生活をしています。


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