志望校を決めてから塾を選ぶメリット[中学受験]

入学したい学校があるから、中学入試を決断するのか。それとも、中学入試をする決断をしてから、志望校を決定するのか。人によって違うと思うが、これは、大きな問題はないと思う。しかし、志望校を決めてから塾を選ぶのか、それとも入塾してから志望校を決めるのかは、どうだろうか。この差異は大きいと思う。

志望校を決めてから志望校に合格できる塾を選ぶ人も多いと思う。入塾後に、模試を受験して、その結果で子どもの学力に合った志望校を塾の先生と相談して決める場合も多いようだ。しかし、実際には、志望校の最終決定は家族で行っている場合が多いことがアンケートでわかった。

アンケートの結果を見ると、第1志望校の決定権は、受験生本人、母親、父親の順に強く、塾はごくわずかな割合であった(表参照)。アンケートでは、受験生本人である子どもが第1志望校を決めるご家庭が年々増加している。5年前は55%だったが、このごろは学校の在校生や塾の受験生にアンケートを取ると70%を超えることが多くなってきた。保護者は、自主的に受験勉強に取り組ませるための手法として、「自分で決めた中学入試だから第1志望校も自分で決めるべきだし、どんなに受験勉強がつらくとも自分で決めた責任がある」というように、主体性を持たせるために志望校を子どもに最終決定させているようだ。塾の先生に相談するのは、親子で志望校を検討するための情報を集める手段と考えられる。

塾によって得意とする学校は異なり、それは中学校の合格実績でわかる。第1志望校を決める前に塾を決めてしまうと、入塾後に、通っている塾では第1志望校の合格実績が少ないことがわかれば、合格の可能性が低くなることになる。第1志望校に合格実績がある塾を選ぶ最大の理由は、第1志望校を志望する生徒が集まり、同じ目標を持った生徒の中で切磋琢磨しながら勉強することが我が子にとってやる気を向上させる最適な学習環境となるからだ。さらに、その塾には第1志望校の情報と合格させるノウハウがあり、先生も生徒を合格させるだけの実力と経験があると考えてよい。塾を選ぶ要素は、それだけではなく、通塾時間、学費、我が子に合った塾かどうかの相性もあるが、最初に我が子に合った塾から選ぼうとすると志望校に合格するという目的からそれた塾選びをしてしまう可能性がある。まず、第1志望校の合格実績があるかどうかで塾を絞り込み、次に通塾時間と学費で絞り込んで行くと失敗がない。最後に、絞り込んだ塾の中で、我が子に合った塾を選ぶべきだ。

志望校を決めてから塾を選ぶことで合格の可能性を高めるメリットがある。確かに、子どもの学力を無視して志望校を決めるべきではないが、入塾しなくとも模擬試験を受験することで子どもの学力を確認することはできる。また、一度入塾すると、カリキュラムが塾ごとに違うことや学習環境の変化などの問題で、転塾にはリスクがある。

【第1志望校の決定権が強い順位<2007(平成19)年 受験生・保護者アンケートより>】


1位 2位 3位 1位 2位 3位
受験生の父親 53 99 212 364 12% 22% 47% 27%
受験生の母親 120 193 97 410 27% 43% 21% 30%
受験生本人 249 115 52 416 55% 25% 12% 31%
その他 2 1 12 15 0% 0% 3% 1%
空 欄 28 44 79 151 6% 10% 17% 11%
合 計 452 452 452 1356 100% 100% 100% 100%

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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