入試直前での精神面と体調面の管理[中学受験]

入試の1週間前ともなると、家族でピリピリしてしまうのは仕方がないが、子どもよりも親のほうが入試を意識しすぎてパニックになってしまうご家庭も多いかと思う。そのようなときは、できるなら子どもから遠ざかったほうが良い。自分の好きなことをすることでリフレッシュしたり、子どもが見えなくなるように、物理的に子どもから離れたりすることでもストレスを緩和できるものだ。きっとそれは無理だろうが、親がイライラしていては子どもに悪影響を与えることはあっても、良い影響を与えることはないということも事実だ。

しかし、よく考えてみると親がそのようなことでよいのだろうか。親がイライラしている様子を、子どもはどのように見ているのか考えてみると、「入試が迫ってきて不安でいっぱいなのに、親は自分以上に不安になっている」と映っているのではないだろうか。親がこのような状況では、子どもは親に頼ることもできず、かわいそうだ。
そのような自分と子どもの姿を思い浮かべて、親としての自覚を持ってほしい。自分の子どもが不安でいっぱいのときに、誰が子どもを支えるのか。親の役割を果たすべきときに、ストレスを感じている場合ではない。

子どもがベストのコンディションで入試当日を迎えられるように健康面に留意して、入試までの1週間をいつものように過ごさせることが親の役割だ。「いつものように」というのがなかなか難しい。受験勉強は、し過ぎてもいけない。あまり勉強しすぎると、体調を崩す恐れがある。この季節は、インフルエンザが流行していると思うのだが、睡眠不足で体力が衰えれば、風邪を引きやすくなる。入試当日、風邪を引いていれば、頭は回転しないし、受験どころではない。しかし、あまり勉強をしていないと、問題を見ても頭が回らなくなる。起床時刻を一定にして、8時間程度の睡眠を確保し、受験勉強は過去問演習とこれまでの復習を毎日一定時間行うのが良いと思う。

試験当日に向けて、入試に必要なものは準備できているか、入試会場まで遅れないように到着できるか、親が何度か確認すべきだ。何度も確認したはずなのに、入試会場で筆箱に鉛筆が入っていないことがわかり、学校の事務室で鉛筆は借りたものの、思わぬハプニングに子どもが舞い上がってしまい、合格するはずの第1志望校が不合格になったという話を聞いたことがある。親としては、責任を果たせなかったことが無念であったであろう。親が冷静でなければ、子どもを支えることはできない。
親が、入試直前に子どもにしてあげるべき事はたくさんある。しかも、何が起こるかわからない。子どもが、円滑に入試に臨めるような準備を怠らず、子どもが不安になったり困ったりしたときに支えてあげなければならない。準備作業を怠りなくすることで心配を解消したい。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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