2024/12/13
第7回 習い事・学習塾について考える その2 学習塾の実態
ベネッセ教育総合研究所 主席研究員 木村治生
前回(その1)では習い事の実態を概観した。今回は学習塾の実態について検討する。果たして、学習塾に通う子どもは増えているのだろうか。また、彼らはどのようなタイプの塾に通っているのだろうか。ここでも、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が共同で実施する「子どもの生活と学びに関する親子調査」2015~23年の結果を用いて、実態を探っていこう。
通塾の経年変化や学年変化
最初に、通塾率について経年での変化を確認しよう。図2-1をみると、この間、中学生は5割、小4~6生と高校生は3割、小1~3生は2割弱で推移していて、大きな変動はない。近年、中学生でわずかに通塾率が低下する傾向がみられるが、全体を総じてみるとほぼ横ばいで推移しているといっていいだろう。
学年別(図2-2)では、受験を迎える小6、中3、高3で通塾率が高まる。小学生では、小6が38.0%でもっとも高く、中1でわずかに低下する。中学生では、中3がもっとも高くて、60.4%になる。しかし、高1で21.9%まで大きく低下する。高校生では、その後、高3にかけて再び通塾率は上がり、35.7%に達する。
学習塾の種類
学習塾の種類(表2-1)では、小1~3生では「プリント教材の教室」の比率が高く、小4~6生では「プリント教材の教室」「補習塾」「進学塾」が三分される。指導形態は、「集団指導」が6~7割で多いが、その比率は小1~3生で低下傾向にある。受講している教科は、「算数」が多く、それに「国語」が次ぐ。小1~3生は「英語」が2~3割、小4~6生は「英語」「理科」「社会」がそれぞれ3~4割程度受講している。
さらに中学生になると「プリント教材の教室」が少なくなって「補習塾」と「進学塾」に二分され、高校生では「進学塾」の比率が高まる(表2-2)。指導形態は、中学生では「集団指導」が5割強、「個別指導」が4割だが、前者は減少傾向で後者が増加している。高校生は「集団指導」が3割、「個別指導」が4割強で、経年変化の傾向は中学生と類似している。「映像授業」が2割いるのも高校生の特徴である。
属性による通塾率の違い
続けて、通塾率について、男女による違い、地域による違いを確認する(図2-3)。男女差については、小4~6生、中学生でわずかに男子の方が高い傾向がみられるが、全体に大きな違いはない。しかし、居住する地域による差がみられ、いずれの学校段階でも「政令指定都市・特別区」の数値がもっとも高く、「5万人未満」がもっとも低い。通塾は都市部ほど盛んなことがわかる。地域差は、前回みた習い事よりも大きい。
最後に、通塾率について、通学する学校の設置者(公立と私立・国立)による違いと世帯年収による違いをみる(図2-4)。公私別については、小学生のうちは「私立・国立」に通う子どもの方が「公立」に通う子どもよりも通塾率が高いが、中学生では「公立」のほうが比率が高くなる。公立中学生は、高校受験があるためだろう。世帯年収別では、いずれの学校段階でも世帯年収による差がみられ、高年収であるほど塾に通う比率が高い。「400万円未満」と「800万円以上」では、小1~3生で2.4倍、小4~6生で2.1倍、中学生で1.7倍、高校生で1.9倍の開きがある。こうした世帯年収による格差は、前回みた習い事よりも大きい。
ここまでみてきたように、通塾率は習い事率と同様に、2015年から2023年にかけての経年ではあまり大きく変化していない。学年別にみると、通塾率は受験の学年で高まり、小学生では小1で1割強だった割合が、小6で4割弱にまで上昇する。また、中学生では中1の3.5割から中3の6割に、高校生では高1の2割から高3で3.5割に上昇する。属性では、居住する地域の人口規模が大きいほど、また世帯年収が高いほど通塾率が高く、その差は習い事よりも顕著である。
それでは、前回(その1)の習い事や今回の学習塾のような学校外での学びには、どれくらいの費用がかかっているのだろうか。次回(その3)は、教育費の状況について解説する。