気持ちの切り替えができていない子に、どう接すれば?[中学受験]

親の役割の中でも、特に子どもへの接し方について、相談がありました。

(質問)
春から5年生と6年生になる女の子が2人いる母です。来年は、まず上の子が中学受験をする予定です。塾にも通っています。まだまだ気持ちが切り替わっていないのかテレビを見たりマンガを読んだりとのんびりしています。なのでついわたしも愚痴を言ってしまいがちの毎日です。本人は、「がんばる」と言いますがなかなか行動に出ないため悩んでいます。これから変わっていくのでしょうか? あまり愚痴を言わず子どもを信じて待とうと思いますが、つい口が先に出てしまい後悔の日々です。
ある人に「受験の合格の秘訣(けつ)は認めてあげること」だと教えられました。わかっていますがやっぱりやるからには悔いなくやってほしいですよね。塾だって安いものではないですから……。親として子どもとどう接すれば良いのかどうか教えてください。


(回答)
子どもが小学生なので、勉強を自主性に任せることができるご家庭はほとんどないと言ってよいと思います。子どもを認めてあげる余裕などはなく、むしろ、遊んでしまう子どもを親が監視し、小言を言って勉強させる、という状況のご家庭が多いのではないでしょうか。「受験の合格の秘訣は認めてあげること」というのは正しいのですが、まだ年齢的に幼い子どもには、無理があります。つまり、自主性の意味や意義がわかっていない子どもは、いくら信頼してあげても嫌いな勉強を自主的にすることはないと思います。このように考えれば合点がいくのではないでしょうか。子どもを認めてあげることが先ではなく、自主的に勉強することの良さと楽しみを教え、自主的に勉強しようとする、その努力を認めてあげるという順序です。「受験の合格の秘訣は認めてあげること」ができるのは中学受験をとおして次第に子どもが自主性を身につけてからで、受験の終盤には可能かもしれません。

そもそも、自分が好きなことに自主的に取り組むのは当たり前で、自主性があるとは言いません。嫌な勉強でも自主的に取り組むからこそ自主性があるということなのです。
それでは、どのようにすれば勉強で自主性は生まれるのかを考えてみましょう。一般的には、勉強して成績が上がることで、自分自身の成長を実感でき、喜びが生まれ、自主的に勉強に取り組むことができるようになります。スポーツに置き換えれば、試合は楽しいが練習は決して楽なものではありません。しかし、優れた選手には、自主的に練習に取り組む選手が多いのです。これは、練習で技術が向上して自分自身が成長できることがわかっているからです。そこで、学習範囲を明確にして、成績が向上する小さな成功体験を親がリードしていくつか積ませてください。親がその努力を認めて励ますのです。努力はほんの少しずつでよいのです。努力できなかったら次はアメを用意するなど、あの手この手で「ほんの少しの努力」を誘ってください。粘り強く。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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