内容を口頭でまとめて人に伝える練習をしているのですが、とてもわかりづらい[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5男子のお母さま


質問

物語の中で登場人物の行動から気持ちや筆者の主張を読み取ることができません。他人の気持ちを推測する想像力が足りないのでしょうか。なるべく読書のあとに書かれていた内容を口頭でまとめて、人に伝える練習をしているのですが、とてもわかりづらく、どうポイントを押さえて練習したらよいのかわかりません。


小泉先生のアドバイス

問題集や塾の教材、または模擬試験にある問題文のほうが良い題材になるかもしれません。

「読書のあとに書かれていた内容を口頭でまとめて、人に伝える練習をしている」とのことですが、本だと内容がどうしても長くなってしまうので、かえってまとめにくい可能性があります。もっと短くて、内容がまとまった文章のほうがやりやすいと思います。たとえば、問題集や塾の教材、または模擬試験にある問題文のほうが良い題材になるかもしれません。なぜ良い題材になるかと言えば、これらの文章はいわゆるクライマックス(あるいはそれに準じる場面)を含む場合が多いのでまとめやすいのです。問題作成者としても、メリハリのある文章のほうが設問を作りやすいので、このような場面を問題文として選ぶのだと思います。
 しかし、良い題材を選んだだけでは、なかなか筆者のイイタイコトをとらえてまとめるのはむずかしいと思います。やはり、「やり方」を示す必要があるでしょう。たとえば、以下のような手順で物語文をまとめると、やりやすいかもしれません。


物語文のまとめ方
(1)「~という物語」という文末にする。
(2)物語の中で注目すべきは、「何が変化したか?」であり、変化するものは「気持ち」か「人間関係」となる。
(3)特に、変化するきっかけとなる「出来事」や「言葉」に注意。この中に筆者のイイタイコトが含まれている場合も多い。
(4)変化は、「I型.」「II型. 」「III型. 」「IV型. 」の4つの型に集約される。たとえば、I型の場合は「仲の悪い兄弟(の関係)が、母親の病気をきっかけに、互いに家族の絆(きずな)を感じる(の関係)」というような展開。なお、という物語は、内容が暗すぎるとか、山場がなさすぎるということで、中学入試にはあまり出題されないと考えて良い。
(5)以上をまとめて、「仲の悪い兄弟が、母親の病気をきっかけに、互いに絆を感じる家族愛の物語」などと筆者のイイタイコトをとらえてまとめる。


このように物語の型や注目すべきポイントを示すと、どうやってまとめたら良いか考え込んでいたお子さまも、少しずつ自分でまとめられるようになります。もちろん物語によっては、なかなかまとめにくい内容のものもあります。慣れないうちは、まずはお母さんに先に読んでいただいて、「これだったらまとめやすい!」という物語文を選んであげると良いでしょう。何回かやっているうちに、まとめるのが上手になってくると思います。あるいは、「何とかまとまったが、なんとも言葉が幼すぎる」という場合もあるかもしれません。たとえば上記の例では、「絆」とか「家族愛」などの言葉が出てこないというような場合です。このような時は、お母さんが手助けして適切な言葉に入れ替えてあげると良いでしょう。このような手助けは、お子さまの語彙(ごい)を豊かにすることにもつながります。また、問題集や模擬試験の解答解説には、問題文の内容を簡単にまとめたものが掲載されている場合もあるので、参考にされると良いと思います。

国語の問題を解く場合には、問われている傍線部やその前後を緻密に読むことも重要ですが、全体の内容をまとめて、筆者のイイタイコトをとらえることも大切です。問題文をまとめる練習も、くり返し行いましょう。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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