あまり話の内容が理解できないまま、適当に理解して本を読んでいるのでしょうか?[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6男子(性格:大ざっぱ)のお母さま


質問

一日に一冊本を読むほど読書が大好きな子です。先生には、読解力があると言われるのですが、「『それ』とはどういう意味ですか?」等の、何を示しているかを問われる問題で、半分は間違っています。読書がすごく好きなのですが、「それ」が何をさすか、筆者が何を言いたいのか、そういうことがわかっていないと、読書はおもしろくないはずですよね? あまり話の内容が理解できないまま、適当に理解して本を読んでいるのでしょうか? とても小さな活字のとても分厚い本ばかり読んでいるのですが、親としては、ちょっと理解できかねます。


小泉先生のアドバイス

読書ではなく、入試問題演習で「精読力」を鍛える

しっかりと文章を理解する読み方を「精読」、速く、多くの文章に目を通す読み方を「速読」と言います。お子さまは「一日に一冊本を読む」ほどのスピードですから、「速読」で本を読んでいるのだと思います。
とは言っても、「あまり話の内容が理解できないまま、適当に理解して本を読んでいる」ということではないでしょう。物語であれば、話のすじはちゃんと理解しているでしょうし、登場人物の気持ちはしっかりと捉えていると想像します。性格的に「おおざっぱ」なために、ものごとを大きくとらえて、細かいことがあまり気にならないのかもしれません。また、今までに多くの物語を読んでいるのであれば、物語のプロットがいくつも頭に入っていて、実際に経験していない事柄でも上手に理解できるのではないでしょうか。だからこそ、先生にも「読解力がある」と言われるのです。
しかし、そんなお子さまが、「『それ』とはどういう意味ですか?」という指示語の問題を半分間違えてしまうとのことですが、これはあり得ることだと思います。それは、「精読」ができていないことに原因があると想像します。

「速読」では、速く文章を読むために、一つひとつの文章の構造をあまり意識しません。「指示語」や「接続語」、あるいはそれぞれの文や段落の役割を考えなくても、筆者が何をイイタイのかを理解することは可能だからです。しかし、テスト問題で問いに答える場合は、やはり「精読」が必要になります。つまり、傍線部とその前後の文章をしっかり読み、論理的に文のつながりを考えながら、問いに答えるという読み方が必要になります。「速読」と「精読」は国語における読解の両輪であり、テストで良い点数をとるには、この二つの力をバランス良く使うことが必要なのです。

たとえば「精読」のみの生徒は、問題文を読むのが遅い場合が多いと思います。読むのが遅いので、問題を解く時間がなかったり、記述問題をそのまま残してしまったりすることで悩むことが多いようです。逆に、「速読」のみの生徒さんは、記述問題で問いに答えていない答案を作ってしまったり、選択肢で最後に誤ったほうを選んでしまうというような失敗をやります。
性格的に大ざっぱな生徒さんに「速読」派が多く、ひどくなると読み飛ばしをする場合もあります。性格的に「几帳面」な生徒さんは「精読派」が多く、登場人物の心情などはきっちりととらえるわりには、筆者がイイタイコトをつかまえるのが苦手なことが少なくありません。ほとんどの生徒さんがどちらかに偏っていることが多く、本番の入試までにバランス良く読むことができるようにする必要があります。

ちなみに、お子さまは「精読力」が足りないと思えますので、読書ではなく、入試問題演習で「精読力」を鍛えると良いでしょう。問いに答える時には、傍線部(または穴あき)やその前後の言葉、あるいは文を丁寧に、しかも論理的に読むクセをつけることです。場合によっては、その場面や段落全体をも再度「精読」する必要があるでしょう。問われている箇所とその周辺を中心に、語と語、文と文、段落と段落の関係を考えながら、ていねいに読んでいくことを身に付けてください。また、指示語の問題を間違えた場合は、文脈どのように追えば正しい指示内容にたどり着いたかを必ず確認するようにしてください。これらを繰り返せば、徐々に正答率が上がっていくと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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