作者・主人公の思いを自分の言葉で表現できないようです[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6女子(性格:強気タイプ 志望校:慶応義塾中等部)のお母さま


質問

国語の記述問題が苦手です。必要なポイントを書き出すことはできるのですが、作者・主人公の思いを自分の言葉で表現できないようです。


小泉先生のアドバイス

志望校が慶応中等部のような学校なら、優先順位が少し違ってきます

「国語の記述問題が苦手」で、「作者・主人公の思いを自分の言葉で表現できない」ということですから、物語文における記述問題、特に「気持ち問題」が苦手ということでしょうか。物語文を出題し、しかも記述問題が良く出てくる学校、たとえば学習院女子などを受験するのであれば、何よりも先に物語文の記述対策を講じなければならないでしょう。しかし、志望校が慶応中等部のような学校なら、優先順位が少し違ってきます。今年の出題内容を例にして、お子さまが行うべき対策のポイントをいくつか説明しましょう。



2011(平成23)年の慶応中等部の国語の試験は、100点満点で45分。上記の一覧に示したとおり、読解問題2(物語文1、説明文1)、知識問題2、俳句の問題1、漢字書き取り1の大問6題の問題構成でした。当校の一番の特徴は、ほぼ選択肢問題である点と、知識問題が非常に多いことでしょう。お子さまが苦手としている物語文の記述問題が出題されていませんから、お子さまには受けやすい試験問題と言えるかもしれません。ただし、注意すべき点はいくつかあります。
まず、女子の最難関の一つでもある当校の国語の問題は、受験生のレベルに比べてそれほど高い難度の問題ではないため、合格者平均が非常に高いと予想されます。実際の数字は公表されていませんが、女子の目標としては80%以上を目指すように指導する塾もあるようです。確かに問題文自体は読みやすいものであり、しかもほぼ選択肢という設問形式ですから、高得点争いの試験になるでしょう。しかも、問題の出され方に慣れていないと、意外なところで失点しかねない問題でもあります。試験時間も45分と短めですから、テキパキと問題に答えていくことも求められます。

知識問題について注意すべき点としては、「慶応関連の知識問題」を最初に挙げておきます。今年であれば、大問二の問4で出題されたような問題です。この問題は、「『福沢諭吉』の著作はどれか」というもので、選択肢が与えられていました。慶応を志望する生徒であれば、慶応や福沢諭吉についてこの程度の知識は持っておいてほしいとの、学校からのメッセージだと思います。毎年、慶応関連の知識問題が頻出ですから、パンフレットなど学校の歴史を紹介する冊子で、これらの知識を培っておくと良いでしょう。
また、ここ数年の傾向として、「俳句」に関する問題がよく出てくるのも特徴と言えます。今年は、「卒業」という季語を使って俳句を作る問題が出ました。俳句のできの善し悪しというより、「字余り」や「字足らず」などに注意して、俳句としての体裁を整えられているかが採点の対象になったと想像します。対策としては、「俳句について」や「どのようにして作るのか」を知ったうえで、何句か実際に作ってみると良いでしょう。
大問4は「慣用句」や「故事成語」に関する問題でしたが、意外に難しかったのではないでしょうか。たとえば「塞翁が馬」や「猿も木から落ちる」などの10の選択肢を挙げて、それぞれを「慣用句」「日本のことわざ」「故事成語」に分類させます。選択肢にはそれほど難しいものは挙がっていませんでしたが、分類するためには、「慣用句」「日本のことわざ」「故事成語」の違いについて知っておく必要があります。そこまで意識している生徒は案外少ないと思いますので、ひとつ突っ込んだ問題と言えるでしょう。

この他の知識問題としては、20題の漢字書き取りも落としたくないところです。書きにくい、あるいは間違いやすいものも出ていますから、漢字の書き取り練習もしっかり行っておくことが必要です。また、より広い一般的な知識を試す問題も出題されます。たとえば女性が手紙を書く場合、「一筆申し上げます」の頭語に対して、「結語は何か」を選択肢の中から選ばせる問題。あるいは、奈良時代に作られた歌集を選択肢から選ばせる問題などは、幅広い知識が求められる、なかなか対策がとりにくい問題だと思います。日頃からさまざまなものに興味を持って知識を広げること、当校や他の学校の過去問の中の知識問題を演習することで問題慣れしておくことが対策として考えられます。また、あまりお目にかかったことのないような知識問題が出ても、慌てずに対応できるようにしておくことも大切です。難しいのは、他の生徒にとっても同じです。万一その問題を落としても、他のところがとれていれば大丈夫という気持ちのゆとりをもって、問題に向かえるようにしたいものです。

なお、他の志望校で記述問題が出題される場合など、物語文の記述対策が必要になることもあると思います。しかし、ポイントは何を優先するかということです。これから年末に向けて、やるべきことは多く、残された時間は少ないという状況が続きます。優先順位を常に考え、効果的な学習を心がけることが大切です。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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