線分図や面積図など、どの図をどの問題で使えばいいのかがわかりません

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

線分図や面積図などを描いて考える問題で、どの図をどの問題で使えばいいのかがわからないようです。ただし、図がかければ、なんとか答えられることが多いです。全体的に基本問題はだいたい理解できているのですが、応用問題になると解答を見ながらでないと解けないことがほとんどです。

相談者:小6女子(大ざっぱ・弱気なタイプ)のお母さま



【小泉先生のアドバイス】


最後まで解くのではなく、問題の図だけを描いて手順を覚える


●どの問題で使うか具体例とともに覚える
中学受験では、線分図や面積図などの図を使って解く問題は少なくありません。「方程式は使わない」というのが中学受験での一応の約束ですから、図や比を使って問題を解くことが多くなるのです。

さて、文章題で使う図としては「線分図」「てんびん図」「面積図」「ダイヤグラム」などがあり、「この問題だったらこの図を使う(と簡単)」というようにほぼ決まっています。図の種類もそれほど多くありませんから、どの問題ではどの図を使うかを具体例とともに覚えてしまうのがいちばん早いでしょう。

たとえば、食塩水の問題(濃度の問題)なら、「てんびん図」か「面積図」を使うと覚えておけばよいでしょう。もちろん他にも解き方はありますし、それは教える先生によっても違ってきますから、教えてもらったやり方をまずは使えるようにしましょう。なお、他のやり方でも解けるようにする(いわゆる別解)と算数の力はグンと伸びるのですが、子どもとしてはやや負担が大きいかもしれません。別解まで要求するのは、ある程度余裕が出てきてからにしたほうがよいでしょう。

●図を描けるようにするには
どの図を使うのかわかっても、図が描けなければ問題は解けません。次は、図を描く練習です。今回は「てんびん図」について、例題とともに考えていきましょう。



【例題1】(基本)

6%の食塩水(A)300gと14%の食塩水(B)100gをまぜました。まぜてできた食塩水は何%の食塩水ですか。



食塩水の基本的な問題です。この問題のてんびん図を描いてみましょう。

【てんびん図を描く手順】
(1) 下図のようなてんびんを描く。黒い三角形は支点。
(2) てんびんの上には濃度を書く。定規と同じで、めもりは右にいくほど大きくなる
(3) てんびんの下には、おもりのように食塩水をつり下げる。


これだけのことなのですが、ここで問題になるのが、どの○に問題文にあるどの数値を入れればよいかということでしょう。恐らくここで迷う子どもは少なくないはずです。





さて、問題にある濃度は、6%、14%、そしてまぜてできた食塩水の濃度(△%とする)です。まず、ここで大切なことは、△%は6%と14%をまぜてできたのだから、当然、数値は6%よりも大きく、14%よりも小さいはず。つまり、6%<△%<14%ということになります。言われてみれば当然のことですが、こうしたことに気付かない子どもが少なくないので「要チェックポイント」といえます。
そして、【手順】(2)にあるように、「めもりは右にいくほど大きくなる」というのも「要チェックポイント」です。最後に、6%の食塩水(A)の下の○には300gを、14%の食塩水(B)の下の○には100gを書いて図2のようになります。見た目にもバランスをとるために支点を移動しましたが、移動しないで真ん中のままでもかまいません。





ここまでかければ恐らく解けると思いますが、念のために最後まで解いておきます。てんびんのつり合いから、両端から支点までの長さの比は、食塩水の重さの「逆比」になります。

300:100=3:1 ■=14-6=8 ■=2より、△=8  答え 8%





てんびん図がなかなか描けない皆さんは、先ほど説明した2つのチェックポイントをよくおさえて、問題を最後まで解くのではなく、とりあえず問題を読んで適切なてんびん図を描く練習を何回もしましょう。下記に例題を出しておきましたから、てんびん図を描いてみてください。やや応用ですが、手順どおりにすれば図は描けると思います。もし、難しいようであれば、ヒントを見て描いてみましょう。



【例題2】(やや応用)

6%の食塩水(A)と14%の食塩水(B)をまぜたら、8%の食塩水が400gできました。食塩水(A)と食塩水(B)を、それぞれ何gまぜましたか。



●ヒント
(1) めもりは右にいくほど大きくなるのだから、左から6%、8%、14%の順に書く。
(2) 食塩水の重さがわからないので、6%の食塩水Aは□g、14%の食塩水(B)は△gとして、それぞれのてんびんの下につるす。
(3)「□gと△gを合わせて400g」ということも書いておく。


【例題2】のてんびん図は下記のようになります。ここまでかければ、答えは出せますね? 「逆比」を使って、食塩水(A)は300g、食塩水(B)は100gになります。





てんびん図が描けないのは、「どこに」「何を」「どの順番」で描くかを覚えていないからです。しかし、それもてんびん図をいくつか描けばコツがわかってきます。そういった作業を飛ばしているので、描けなくなってしまっているのでしょう。問題を最後まで解くのではなく、まずは問題の図をかいて、「図を描く手順を覚える」という練習をすることが大切です。

●どうやって求めたのか? その原理も教えたい
てんびん図は描けるようになったし、問題も解けるようになった。でも、なぜてんびん図で解けるのかはわからない、という状態はあると思います。ひょっとすると、案外多くの皆さんが解き方について、本当の意味ではわかっていない可能性もあります。しかし、最初はそれでよいのだと思います。解き方を学び、問題を多く解いていくことで、徐々に解けるメカニズムを理解していくというくらいで十分でしょう。

たとえばてんびん図の場合は、次のような説明が可能です。



食塩水の濃度では、『濃度×食塩水の量=食塩の量』という関係が成り立つ。また、てんびんでは、『支点からの距離×荷重=回転する力』という関係が成り立つ。これより、濃度を距離に、食塩水の量を荷重に置き換えることで、てんびん図で問題が解ける。



こうした説明は、1回は教えるべきだと思います。初めに教えるか、あるいは少し慣れてから「実はこういうことだ」と教えるか。恐らく算数が好きなお子さんは最初に、苦手なお子さんはあとで教えたほうがよいと思います。いずれにしても、なんとなくでも原理を知ることは、さらに算数の力を付けることになると思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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