説明文は得意ですが心情の変化を問われる問題が苦手です[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6男子(性格:強気タイプ 志望校:武蔵、浅野、桐光学園)のお母さま


質問

地道に努力することが苦手なので、「やれば取れるのに」という知識分野を落としてしまったりします。物語より電車系の雑誌を読むのが大好きなので、説明文は得意ですが心情の変化を問われる問題が苦手です。


小泉先生のアドバイス

武蔵は登場人物の複雑な気持ちがうまくとらえられるかを試す問題

説明文は得意ですが、物語文があまり得意ではないようですね。特に、心情の変化を問われる問題が苦手ということであれば、受験される学校の国語の出題傾向によっては、緊急に対策を講じる必要があります。志望校として挙げられている3校の出題傾向を見ながら、必要な対策を考えていきたいと思います。

まず、武蔵ですが、お子さまの苦手である物語文を多く出題する学校です。時々、物語文以外の文種も出ますが、物語文を1題出題する場合が多く、しかも問いはほぼ記述問題というのが特徴です。しかも、字数制限や解答欄の大きさによる制限がありません。問いの左にある「解答スペース」に、必要なだけ書きなさいという具合です。読解力はもちろん、記述力がしっかり試される試験ですから、記述力を十分に鍛練する必要があります。
また、心理描写やその気持ちになった理由などを詳しく書き込むことが望まれる試験でもあります。たとえば、通常の問題であれば、「悲しい」という心情だけをおさえれば良いところを、「悲しい」けど「うれしい」など、複数の心情をとらえる必要があるということです。
このように、武蔵は登場人物の複雑な気持ちがうまくとらえられるかを試す問題ですから、「心情の変化を問われる問題が苦手」であれば、かなり苦戦する可能性があると思います。単純な問題の場合、心情は問いの傍線部の前後を根拠にすればくみ取れるのが一般的です。しかし、武蔵に関してはかなり広範囲に目配りをする必要があります。
それからもう一つ。心情表現からなんらかの心情をとらえたのは良いのですが、なかなか適切な言葉にできないで困っている生徒さんも多いはず。武蔵の国語では、登場人物の気持ちが複雑になるため、その分、気持ちを表す抽象度の高い言葉を使う場合が少なくありません。表現力を豊かにするために、語彙(ごい)力を増やすことも必要です。

ところで、今年の武蔵は物語文ではなく論理的随筆文でした。そのためか合格者平均点が71.7点と高く、国語では差のつきにくい問題だったと言えます。しかし、あまり安心していてはいけません。過去の傾向を見てみると、随筆文の出題などにより合格者平均が上がった年の次の年は、本格的な物語文が出題されています。問題の難度はいっきに上がり、合格者平均が大幅に下がっています(2007<平成19>年:68.2%→08<同20>年:45.6%)。来年も同じようなことが起こる可能性は大いにあると考えます。十分注意して、万全の準備を行って本番に臨むべきでしょう。

浅野、桐光学園に関しては、武蔵ほど物語文に偏った出題はしません。今年は両校とも物語文と説明的文章がそれぞれ1題ずつでした。設問形式も選択肢が大多数で、記述問題は2題でした。お子さまにとっては、より取り組みやすい試験問題と言えるかもしれません。ただし、浅野の物語文では、65字以上80字以内とかなりの字数の記述問題が一題出題されています。字数が多いと、書きづらいと感じる受験生も少なくないと思いますので、この点に関しては十分な記述対策を行っておく必要があるでしょう。

このように過去の問題を見ていくと、学校によって出題傾向がかなり異なることがわかります。どの文種が出ても、どんな設問形式が出ても、十分に対応できる国語力を培うことは理想ですが、時間的になかなか難しい場合もあります。お子さまの得意・不得意を十分に考慮した志望校選びと、もし決定した志望校に苦手なものが頻出であれば、それに対して早めに対策を講じ、可能な限り万全な状態で本番に臨まれることが大切です。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

子育て・教育Q&A