物語文では、心情を説明する問題でポイントが複数あると必ず漏れがあります[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
質問者
小6女子のお母さま
質問
説明文が苦手です。問題文にあげられた例から導かれる結論が具体的な文で示されていない場合、それを的確な言葉でまとめることができません。抜き書き問題はわりとできます。物語文では、心情を説明する問題でポイントが複数あると必ず漏れがあります。
小泉先生のアドバイス
「誰に対する気持ちか?」と「どのような気持ちか?」を一つひとつチェック
「ポイントが複数あると必ず漏れがあります」というお悩みですが、ここで言う「ポイント」とは登場人物の「心情」のことだと思います。学校によっては心情が一つだけではなく、いくつもあるような複雑な問題を出題します。このように記述問題で複数のポイントが存在するようなことを、わたしは「記述の多様性」と呼んでいます。記述問題が苦手なお子さまが多い中で、多様なポイントに気付き、期待されるレベルで答案を仕上げるためにはいくつかの点に注意する必要があります。
まず必要なことは、「誰に対する気持ちか?」に注目することです。たとえば、AくんとBくんが話をしている場面で、「……とあるが、この時のぼく(Aくん)の気持ちを説明しなさい」と問われたとします。この時考えるべき気持ちは、まずは「AくんのBくんに対する気持ち」でしょう。また、何らかの関係があるのであれば、その場にいない「第三者のCくんに対する気持ち」も考える必要があるかもしれません。さらに、そのようなことを考えるAくんの「自分自身に対する気持ち」も考える必要がある場合もあります。
つまり、ここで重要なことは、全体の流れの中で一人ひとりを明確に区分しながら、それぞれの気持ちを考えていくということです。全体で考えると焦点がぼけてしまう可能性がありますが、一人ひとりをチェックしていけば、見逃しやすい気持ちが見つけやすくなるということです。
次の注意点としては、「どのような気持ちか?」に注目します。この時大切なことは、一人の人に対して「複数の気持ち」を同時に持つ可能性を考えることです。人は複雑ですから、「うれしい」時でも「恥ずかしい」とか「くやしい」など複数の気持ちをいっぺんに持ちます。記述問題の答案を書く時は、「気持ちは一つで良いのか? 相反する気持ちはないのか?」と常に自問自答することが必要です。
以上、「誰に対する気持ちか?」と「どのような気持ちか?」を一つひとつチェックし、「ポイントは一つとは限らない」ことを心がければ、ポイントを書き忘れることは徐々に少なくなっていくでしょう。なお、お子さまには次のように指導するとわかりやすいと思います。
〔指導例〕「あなたが、何人かにたくさんの買い物を頼まれたらどうする? たとえば、お母さんは『牛乳』と『歯ブラシ』、お兄さんは『封筒』と『切手』、そして妹は『アイスクリーム』という具合。この時、『全部で5個』と覚えるよりも、『お母さん2つ、お兄さん2つ、そして妹1つ』と覚えたほうが思い出しやすいし、漏れも少ない。これと同じように、心情のポイントを探す時も一人ひとりの気持ちをそれぞれメモ書きしてみなさい。そして、そのリストがそろったら答案を書きはじめると良いでしょう。最初は面倒くさいでしょうが、慣れてくればメモ無しでもできるようになりますよ」という具合です。
子どもは具体的な例を示すことで、すべきことのイメージをつかみやすくなります。導入する際は、このような身近な具体例とともに説明されることをおすすめします。