2012年中学入試における不況の影響の予測 [中学受験]
まず、2011(平成23)年入試における不況の影響がどの程度あったかを調査してみよう。2011年入試では、全体的に受験者数が減少しても難関校や上位校は受験者数がそれほど減らないばかりか、増えることも考えられるという予測があった。予測の結果はそのとおりとなった。2011年入試では、受験者数が全般的に減少することで、全般的な不況の影響はあったと思うが、難関校・上位校の受験者数前年対比が100%を超えたことで、不況の影響を受けていないことがわかる。
教育熱心なご家庭のお子さんがすべて優秀とは言えないが、優秀なお子さんが多いことも確かだ。難関校・上位校の受験者数前年対比が100%を超えたことから、教育熱心なご家庭では不況の影響を受けないということもできる。逆に、不況によって中学受験を取りやめる層の割合が一定で、もともと教育熱心ではなく周囲に引きずられて受験する層が多いとすれば、2010(平成22)年と2011年の入試で、不況の影響を受けた層は激減して2012年入試では少なくなっていると考えられる。教育熱心な層が一定であれば、2012(平成24)年は教育熱心な層の占める割合が大きくなり、それほど受験者数は減少しないかもしれない。
2011年入試で、学費の高い学校と低い学校では、受験者数前年対比でどれだけの差があるかを分析し、不況の影響を検証する。私立校だけに注目して学費と受験者数前年対比を分析すると、2011年入試では、6年間の学費が「425万円未満」のところでは受験者数前年対比が100%、「425~474万円」(同93%)、「475~524万円」(同91%)、「525~575万円」(同103%)、「575万円以上」(同100%)と、6年間の学費が中間の学校で受験者数前年対比が減少しており、不況の影響が見られる。学費が高い「575万円以上」の学校の受験者数前年対比が変わらないのは、それらの学校はブランド大学付属校が多く、志願者が不況に影響を受けない層が多いからだと思われる。学費が「525~575万円」の学校で受験者数前年対比が103%と高いのは、2010年の受験者数前年対比が87%と極端に低かったためと思われる。また、6年間の学費が「475~524万円」の学校は2010年でも受験者数前年対比が88%と低く、不況の影響で受験者数を減少させていることがわかる。この中間の学費を志望する層が、より学費の低い学校に流れた可能性がある。
より学費の低い学校に流れたことで、不況の影響は確かにあると思うが、もともと私学に子どもを入れようとする教育熱心な保護者は、多少の不況では、私学への進学をやめることはないだろう。また、2010年と2011年で、不況の影響を受ける層が受験しなくなったと考えれば、2012年入試では受験者数がこれ以上減少しないということも考えられるのではないか。