子どもを許すことが大切と言われても、だらだらした態度を黙認していてよいのか悩みます【後編】[教えて!親野先生]

子どもを温かく見守り、許すことが大切とわかっていても、気になる言動や、だらだらした態度を見過ごしていいのか──。保護者であれば一度は感じたことのある悩みについて、教育評論家の親野智可等先生に伺った前回。親野先生からは「許し難いことを許すことに意味がある」「子どもはすぐには変えられない。変わるのは親」「気になる短所とは別の方面への働きかけが事態を好転させる」との3つのアドバイスをいただきました。後編である今回は、その具体的方法と子どものやる気を育てる心がけについて伺いました。

【質問】だらだら遊んでばかりの子ども……黙認していて大丈夫なのでしょうか?

子どもを許すというのは具体的にどうすればよいのですか? だらだらしているのをただ黙認(温かく見守る?)していればよいのですか? 勉強せずに遊んでばかりで、ごろごろ……。宿題も忘れがち。嫌なことから逃げてばかりいる息子。このまま面倒なことから逃げ続ける人間にはなってほしくないので、「嫌でもやらないといけないことは誰にでもある」ということをわからせたいのですが、どう接すればよいのでしょうか? 「お母さんだって、毎日晩ご飯作るの面倒だなーって思うことはあるから、気持ちはわかるよ。でも、お母さんは作ってるでしょ?」なんて言っても、効果無しです。言葉のかけ方や接し方を具体的に教えていただけたら嬉しいです。(ぱんだ さん)

親野先生からのアドバイス

前回に引き続き、ぱんださんへのアドバイスです。

では、別の方面からうまく働きかけるとは、どういうことでしょうか?
それは、私がいつも繰り返し繰り返し書いていることです。

子どものやる気を高める3つのほめ方で事態を好転させる

まずは、叱ったり責めたり嫌みを言ったりするのをやめて、ほめることを増やしてください。
そのためには、子どもが熱中していること、少しでもやる気になっていること、少しでも得意なこと、ほんの少しでも成長したこと、などをほめることです。
その時大切なのは、親の価値観にとらわれずにほめることです。
つまり、親からは大して価値のないことに見えても、ほめることです。
これは多面的評価法というほめ方です。

そして、子どもの短所を言い換えて、長所としてとらえ直してほめることも大事です。
これは短所言い換え法というほめ方です。

さらに、今できることを当たり前と思わずに、それをほめることも大事です。
これは、一歩下がり法というほめ方です。

マイナスイメージの言葉をやめて、プラスイメージの言葉を増やしてください。
「また、○○してない」「なぜ、○○できないの」「○○しなきゃダメでしょ」「ダメだねー」などの言葉をやめるのです。

「○○できてきたね」「○○してくれてありがとう」「○○するとうまくいくよ」などの言葉に自己翻訳してください。
それがムリな時は、せめて「さあ、○○しよう」「何分で○○するよ、用意、ドン」などの単純型にしてください。

このように、ほめることを増やしたりプラスイメージの言葉を増やしたりすることが大事です。
それが増えれば増えるほど、子どものやる気は高まります。
叱る言葉やマイナスイメージの言葉が多いと、それだけで子どものやる気は削がれることになります。

このように、だらだらしているのは黙認して、それに直接的に働きかけようとしないで、その分、それ以外の別の方面から「できること」と「やるべきこと」をやるのです。
しかも、成果を求めず、それ自体を楽しみながら、です。
その結果として、つまり間接的な結果として、物事がいいほうに回転し始めるのです。

子どものやる気の芽を摘み取って、やるべきことを押し付けないよう気をつけて

ところで、子どもがだらだらしていてやる気が見えない、という話は本当によく聞きます。
とくに、宿題や勉強、片付けやお手伝いなどの生活習慣などです。
でも、こういう子どもはけっこう多いのです。

というのも、子どものころというのは、目的意識を持てないことが多いからです。
自分なりの目的意識があれば、生活全体に張りが出てくるということもあるのですが、それが持てないことが多いのです。

もともと子どもは自分でいろいろなことに興味を持ってやり始めるのですが、そのやる気の芽が大人に摘み取られてしまうことがよくあります。
大人には子どものやっていることがくだらないことに見えて、もっと「大事なこと」や「やるべきこと」をやらせようとするからです。

やりたいことはやれないのに、宿題や勉強、片付けやお手伝いなどの生活習慣はしっかりやるように言われても、なかなかその気になれないわけです。
一般的に、子どものころというのはそういうことが多いのです。

子どもの今の性質が一生の長所・短所になるとは限らない

もちろん、目的意識がなくても、楽しくなくても、意味を見いだせなくても、とりあえずやるべきことはきちんとやれる子もいます。
そういう子なら、親として楽ではあります。

でも、その子のそういう性質が、一生その子の長所であり続けるとは限らないのです。
仕事を始めてから、まじめすぎて手が抜けない、適当に息抜きができない、自分で自分を追い込んでしまう、などということになる可能性もあるのです。

かえって、やりたくないことは適当に済ませるという性質が、大人になって仕事を始めてから役立つこともあるのです。

やる気の芽が出る時はどの子にも訪れる。親に求められるのは「待つ」ことと「受け入れる」こと

そして、今だらだらしている子がずっとそのままでいるとは限りません。
そういう子もやりたいことを見つけて、目的意識を持ってやり始める時がくるのです。
ただし、大人がジャマをしなければ、ですが。
それによって生活に張りが出てくれば、いろいろなものがいいほうに回転し始めます。

本当は、小さい時からずっと、そういう機会はいくらでもあったのです。
でも、その芽を伸ばしてもらえないことが多いのです。
子どもがある程度大きくなって大人の抑えが効かなくなった時、子どもが自由にやりたいことをやれるようになった時、それまでだらだらしていた子が嘘のように張り切り出すということはよくあるのです。

どの子にも、やる気の芽が出る時が必ずあります。
それを待つという発想が必要です。
待つこと、それは親にとって大事な資質なのです。

そして、やる気の芽が出た時は大切に育ててやってください。
親の価値観に合わないものでも、受け入れてやってください。
親の価値観でそれを否定したら、子どものやる気はしぼむだけです。

親子の信頼関係があれば、子どものやる気はさらに伸びる

そして、もう一つ大事なことは、ずっといい親子関係をつくっていくことです。
つまり、親子の間に信頼関係がある状態です。
具体的には、子どもが「わかってもらえている」「受け入れてもらえている」「愛されている」と感じられるようにしておくことです。

なぜこれが大事かというと、それがないと、せっかく子どもがやる気になった時に親が手助けしてやることができないからです。
親子関係が壊れていると、せっかく子どもがやる気になった時、親が手助けしようとしても「放っておいて」「関係ないじゃん」と言われてしまいます。

子どもの状態を変える魔法の言葉はないと覚悟し、正しく待とう

今みなさんの目の前にいる子どもの状態は、とても受け入れ難いものかもしれません。
許し難い状態かもしれません。
でも、それこそを許して受け入れてやってください。

その状態を一気に変える魔法の言葉などありません。
魔法の接し方もありません。
パンダさんは「言葉のかけ方や接し方を具体的に教えていただけたら嬉しいです」と書いていらっしゃいます。
これも、多くの親たちの願うところですが、一気に効果の出る言葉や接し方はないのです。

「そういうものはない」と、はっきり認識することが大事です。
そのうえで、許し難いものを許し、それ以外の別の方面から働きかけてください。
成果を求めずに楽しみながら、「できること」と「やるべきこと」をやってください。
そういう覚悟を決めてください。
魔法の方法があると思っていると、大事な覚悟ができません。

なにごとも時間がかかるのです。
特に、子どもの成長には時間がかかるのです。
本人がやる気になることが一番大事です。
そのために、親は正しい待ち方で待つことです。
いろいろなジャマをしないことです。

気になる状態も、成長への必要段階。サナギが成虫になろうとしているとイメージして

「今の状態を許したら、一生そのままになるかも」などと思う必要はありません。
絶対にそんなことはありませんから。

こう思っていればよいのです。
「こういう段階が必要なんだな」「エネルギーをためてるんだ」「後伸びの準備かも」「大器晩成かも」と。

それはサナギの状態に似ていると言えます。
外から見ると、サナギはずっと同じ状態に見えます。
でも、中では成虫になる準備が着々と進んでいるのです。

家で飼っていた幼虫がサナギになったとします。
それが成虫になるために、私たちに何ができるでしょう?
正しい待ち方で待つこと、これ以外ないのです。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
ぱんださん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。

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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。長年の教師経験をもとに勉強法や家庭教育について具体的に提案。TwitterやYouTube「親力チャンネル」、Blog「親力講座」などで発信中。全国各地の教育講演会でも大人気。詳細は「親力」で検索

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