面積の出し方の式も、時間が経てば忘れてしまいます[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6男子(性格:大ざっぱ・感情的)のお母さま


質問

漢字を全然覚えられません。一度書けても、次の日には忘れてしまいます。平面図形も空間図形も苦手です。面積の出し方の式も、時間が経てば忘れてしまいます。


小泉先生のアドバイス

「暗記が苦手」と思う前に、「暗記する良い方法はないか?」を考える

暗記が得意な生徒と苦手な生徒を比べた場合、受験にはやはり暗記が得意な生徒のほうが有利だと思います。しかし、暗記が苦手と思っている生徒さんの多くは、実は暗記のやり方を間違えている場合が少なくありません。正しいやり方で勉強すれば、多くの生徒さんが努力に見合った成果を得られると思います。

暗記のポイントはいくつかありますが、なんと言っても「繰り返すこと」が大切です。新しく出てきた漢字を2~3回書いただけでは、次の日には忘れてしまうでしょう。やはり、1つの字を6~8回は書く必要があります。ただし、回数が多ければ良いというものではありませんから、10回書くのであれば5回ずつ時間を分けて(夕方に1回、寝る前に1回など)学習したほうが効率的だと思います。
次のポイントは「強く印象づけること」です。漢字を覚える場合でしたら、必ず「目で見て」「手で書いて」「漢字を読んで」「(それを)耳で聞いて」という具合に、なるべく五感を使うことが重要です。面倒くさがって書かない生徒さんもいますが、それでは逆に効率が悪い勉強方法と言えます。
これは漢字ばかりではなく、英語の単語を覚える場合もやり方は同じです。新しい単語は手で書いて、ネーティブの正しい発音をCDなどで聴いてから、自分で発音して覚えていくと良いでしょう。
また、新しく覚えた知識を「使う」ことで「印象づける」のも良いでしょう。たとえば、文章を書く時に新しく覚えた漢字をなるべく使うようにするなどです。あるいは、新しく習った公式を使って練習問題を解くなども、暗記を定着させるための方法です。社会などでさまざまなことを学んだあとに、その関連の演習問題を解くのも、知識の定着が目的と言えます。

さらに、「関連付けること」も暗記の効率的をアップさせます。漢字であれば、「へん」や「つくり」などの部首を意識することで、暗記しやすくなるでしょう。たとえば「さんずい」のついている漢字は「海」とか「泳」など、水や液体に関連したものだと考えると暗記しやすくなりますよね。
また、算数の公式の場合は、単に公式を暗記するだけではなく、その公式が出てきた過程も理解すると良いでしょう。もっと言うのであれば、公式を忘れたら、自分で公式を導けるくらいになれば良いということです。
たとえば図1のようなひし形の面積を求める公式は、「ひし形の面積=対角線×対角線÷2」になりますが、これを単に暗記しているだけだと、「『ひし形の面積=対角線×対角線÷3』だったっけ? あれ?」ということになってしまいます。そこで、この公式がどのように導かれるのかを、理解しておくのです。
たとえば、図2にあるように、ひし形のまわりをかこむ四角形EFGHを作ります。ひし形のまわりの三角形の面積の合計は、ひし形の面積と同じですから、四角形EFGHの面積はひし形の2倍になります。しかも、四角形EFGHの辺はひし形の対角線と同じです。これより、ひし形の面積はひし形の対角線をかけ合わせたものの半分になることがわかります。すなわち、「ひし形の面積=対角線×対角線÷2」という公式を導き出せました。

以上、3点が暗記のポイントです。暗記するものによってやり方は変わりますが、基本的な方法論は同じです。「暗記が苦手」と思う前に、「暗記する良い方法はないか?」と考えてみてください。改善する可能性は高いと思います。


ひし形の面積(図1)ひし形の面積(図2)


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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