ミスをしなくなるためには、どんな方法があるでしょう[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小6男子(性格:大ざっぱ)のお母さま


質問

簡単な問題でミスをします。正答率が7割の問題で計算ミスや転記ミスをして点数を落としています。難しい問題はできているのに、もったいないのです。こういうミスをしなくなるためには、どんな方法があるでしょうか。


小泉先生のアドバイス

「悔しさ」や良い意味での「執念」が出てくれば、ケアレスミスは少なくなる

性格的にやや大ざっぱなところがあるためか、「ついうっかり」というケアレスミスが多いのでしょう。実際、「なんでこんなところで?」というところでポカをする生徒さんは少なくありません。本当にもったいない失点なのですが、本人は意外にけろっとしている場合が多いようです。「これは本当の間違いではない」という思いがあるようで、次からは絶対に同じ間違いはしないという意気込みはあまり感じません。基本的には本人の意識の問題ですから、自分で注意しようと思わなければ、ミスを少なくするやり方を教えてもあまり効果はありません。しかし既に6年生ですから、すぐにでもこのクセを直す必要はあります。入試本番でうっかりミスが出たら、悔やんでも悔やみきれないでしょう。

さて、ミスを少なくするには、ケアレスミスは絶対にやらないという「意識」を持つことが大切です。そういった意識が持てれば、面倒臭がらずに検算するでしょうし、転記ミスも再チェックで未然に防げると思います。
それではどうしたらそのような「意識」を持たせることができるのでしょうか。それにはなんといっても、「悔しがらせる」ことです。ふつうケアレスミスによって減点されると、それなりに悔しいはずですが、鷹揚(おうよう)なお子さまですとあまり感じないようです。そんな様子をみて、「1点の差で合格・不合格が分かれるのよ!」と叱っても、あまり実感がわかないでしょう。
しかし、志望校の過去問演習をしている時であればどうでしょう。「あと5点あれば。この問題をケアレスミスしなければ、合格最低点に届いていたのに! 合格していたのに!」という事態が起これば、さすがのお子さまも「残念!」という気持ちになるでしょう。本当に残念だったことを、お母さんも強く強調することで、「あともう1点取る」という「執念」が芽生えるのです。この「執念」は非常に大切で、合格ライン付近にいる多くの受験生から抜け出し、合格をつかむために絶対に必要な心構えだと思います。

あるいは、通常の模擬試験の時にも、結果の見方によってそういった「意識」を持たせることは可能です。たとえば、ある模擬試験で算数が150点中89点だったとします。そしていつものことながら、計算問題1問と小問集合のうちの1問を、ケアレスミスで間違えたとします。計算問題が1問5点、小問のほうが8点とすると、合計で13点を失った計算になりますから、本当は102点とれたことになります。ここで89点と102点と比べると、「13点惜しかったね」で済んでしまいますが、偏差値で比べてみたらどうでしょうか。
手元にあった、実際の模擬試験の教科別評価表で比べてみると、89点は偏差値55で、102点は偏差値60でした。なんと偏差値が5も違ってくるのです。学校間の偏差値の違いを考えると、偏差値2~3の差でもかなり違いを感じます。まして偏差値が5も上の学校であれば、「ちょっと手が届かない」というように感じます。しかし、具体的に模擬試験の問題で考えれば、本当につまらないケアレスミスで2問失っただけのことなのです。
そして、もしこのようなケアレスミスを未然に防ぎ、しかもあとさらに15点とれれば、偏差値65に到達することも可能になります。偏差値だけで考えると、とても不可能に思えますが、具体的な問題で考えると、「この問題とこの問題が解ければいいんだ!」と偏差値65のイメージができてきます。

もちろん、イメージだけでは解けるようになりません。実際にできなかった問題を復習し、必要であればその単元の類題をくり返すことで、弱点を克服していくことが大切です。また、勝負は4教科合計の偏差値ではあります。しかし、まずはイメージを持てなければ、「できるかもしれない」という気持ちになれません。そして、それはケアレスミスを防ぐ時も同じです。「こんなミスをしなければ、自分はここまで到達できる!」というイメージを持ち、もしケアレスミスをしてしまったら心から悔しがってほしいのです。
「悔しさ」や良い意味での「執念」が出てくれば、ケアレスミスは少なくなるでしょう。そしてそれが、志望校合格への道に続いていくのだと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

子育て・教育Q&A