志望校検討のための2010年入試の予想 その2[中学受験]

志望校を検討している親御さんの中には付属校を中心に考えているかたも多いと思う。不況の影響と思われるが、2009(平成21)年入試では安定性を求め付属校の人気が高かった。現在はさらに不況が深刻化しているので、2010(平成22)年入試では、さらに付属校の受験者数は増加する可能性がある。特に女子に付属校志向が強くなりそうだが、人気があるのは女子校ではなく、共学校の付属校で、むしろ女子校の付属校は共学校の付属校に人気を奪われる可能性もある。
受験者数を増やしている付属校は、人気が高い大学の付属校である早慶ランクやMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)ランクが中心だ。たとえば、成蹊大学の付属校である成蹊は(と言っても成蹊大学に進学する割合はそれほど高くないが)、大学がMARCHランクの少し下に位置するので、受験者数は緩和している。

早稲田大学高等学院中と中央大学付属が新規開校になることで、2010年入試では、付属校人気に拍車がかかる可能性が大きくなっている。もちろん、早大学院と中大付属の新規開校で受験者数が減少する学校もあるだろう。早大学院や中大付属と地理的に近く偏差値が同程度の進学校は、影響を受けると考えられる。
たとえば、桐朋や海城は早大学院の影響を受けそうで、すでにこの2校は四谷大塚の2009年第2回合不合判定テストの結果からも志願者数が前年比で減少傾向にあるようだ。このように、地理的に近く偏差値が同程度の付属校や進学校で受験者数が減少したり、付属校はMARCHクラスで競合が高まったりする可能性がある。

2010年入試に登場する、人気大学の系列校になった学校にも注目すべきだ。新規開校でなくとも、人気大学の系列校となれば、偏差値は高くなり、受験者数も増加するだろう。
横浜山手女子学園は2009年の合格率80%偏差値は40であったが、中央大学の系列校となって(名称も「中央大学横浜山手」に変更)中央大学に60%進学できるようになり、偏差値も55前後に上がる可能性がある。根拠は、立教大学に50%進学できる香蘭女学校の2009年の80%偏差値が2科で57であること。中大横浜山手の偏差値が大幅に上がっても不思議ではない。
横須賀学院は2009年の80%偏差値が38だったが、青山学院大の系列校となって青山学院大に60~70%進学でき、うまくすると90%進学できる学校となり、同様に近い将来偏差値55前後となる可能性がある。
この2校の提携内容は順次発表されているので、目が離せない。中大横浜山手は設備が整うまでの当面の間は女子だけだが、横須賀学院は共学なので男子の受験生にも影響が出るだろう。

人気大学の付属校の新規開校や系列校の登場で、2010年入試は難関校や上位校を巻き込んだ大きな変化の年となりそうだ。受験生にとっては大きなチャンスともなるが、入試動向をうまく捉えられないとチャンスを活かすこともできなくなるので、お子さんの志望校には、絶えずアンテナを張り巡らせておくべきだ。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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