2009年度入試で何が問われたか<理科>
(4)学校別分析
雙葉中学校
記号選択問題と記述問題・知識問題と思考問題がバランスよく出題されています。今までは制限時間が25分でしたので、高速で解かなければ間に合わなかったのですが、来年度からは30分になりますので、じっくりと落ち着いて解くことができると思います。
大問2は物理分野の出題ですが、悩みすぎてあまり時間をかけないように注意しましょう。合格に必要な得点率は75%。合否を分けた1題は大問4です。大問4は、地学(月)の問題ですが、来年度も天体が出題される可能性が高いので、重点的に学習しておきましょう。
<合否を分けた1題>
大問4 「天体」についての問題
女子学院中学校
問題数は多いですが、時間が40分もあるので十分落ち着いて解けます。大問4のような問題を普通に解くためには、参考書や塾での勉強だけで理科をカバーするのではなく、低学年時に工作などを行って経験を積んでおく必要があります。思考・計算問題が昨年度から増えつつあります。合格に必要な得点率は80%、合否を分けた1題は大問4です。
<合否を分けた1題>
大問4 「力のつり合い」についての問題
フェリス女学院中学校
解答用紙が2枚(表裏)あり、最も記述量が多い学校です。しかしそれほど難しい思考問題はありませんので、ガンガン書いていきましょう。今年の7月に日本でも日食が観測されますので、来年度、大問2と似たような問題が、他の学校でも出題される可能性が非常に高いです。他校の受験生もこの問題は要チェックです。
合格に必要な得点率は85%、合否を分けた1題は大問2です。
<合否を分けた1題>
大問2 「影のでき方と日食」についての問題
桜蔭中学校
今年度はやや問題がやさしくなりました。桜蔭は毎年、生物分野の出題内容がユニークですが、今年度はやさしくなりました。来年度は生物分野が再びユニークになるのではないかと予測します。
合格に必要な得点率は85%、合否を分けた1題は大問1です。
<合否を分けた1題>
大問1 「ふりこの運動」についての問題
武蔵中学校
毎年そうですが、武蔵は理科ではあまり差がつきません。理科は配点も低く、合格者平均点と不合格者平均点の差が小さい科目となります。その差が大きいのはやはり算数で、合格するためには算数に力を入れることが重要です。
合格に必要な得点率は85%、合否を分けた1題は大問3です。
<合否を分けた1題>
大問3 「道具」についての問題
駒場東邦中学校
昨年度より平均点が約15点あがっていますが(配点80点)、大問1で点をとり、大問3で失点した受験生が多かったのではないでしょうか。大問4・大問5の物理・化学分野は、良問がそろっています。来年度は、天体の問題も充実してくると予測されます。
合格に必要な得点率は70%、合否を分けた問題は大問4・大問5です。
<合否を分けた1題>
大問4 「磁石の力とてこのつり合い」についての問題
大問5 「食塩水の濃さと沸とう」についての問題
栄光学園中学校
栄光の理科は、ここ数年出題分野が1分野に限られています。07年度:生物(ソメイヨシノ)・08年度:物理(モーターと乾電池)・09年度:地学(火山)です。来年は化学(実験データ系)なのか、地学(天文系)なのかわかりませんが、今後も出題分野を絞り、1つのテーマに対して深く掘り下げていくタイプの出題になることが予測できます。
合格に必要な得点率は65%、合否を分けた1題は大問2です。
<合否を分けた1題>
大問2 「日本の火山」についての問題
麻布中学校
やや標準的な問題になりました。麻布のためのトレーニングをしてきた受験生にとっては、安心して解けた問題だったのではないでしょうか。麻布は伝統的に、問題文に沿って論理的に思考させる問題が出題されます。文章量も多く、国語力が強い生徒は有利です。過去問を20年分くらい解いておくとよいでしょう。
合格に必要な得点率は75%、合否を分けた1題は大問3です。
<合否を分けた1題>
大問3 「浮力」についての問題
筑波大学附属駒場中学校
大問1から大問5までを、できれば10分以内、遅くとも15分以内で解きましょう。大問5までは、受験生の得点差はほとんどつきません。大問6・大問7が勝負です。大問7のてこの問題は、日頃のトレーニングがしっかりしていないと、未知数が多すぎてとても立ち向かうことができません。10分以上残っていないと落ち着くこともできません。大問7は、効率良い解法に気づいて全問正解したか、大半を失点したかのどちらかの子が多かったのではないでしょうか。
合格に必要な得点率は85%、合否を分けた1題は大問7です。
<合否を分けた1題>
大問7 「てこのつり合い」についての問題
開成中学校
開成は、合格者平均点と受験者平均点の差が5点以内という、差がつきにくい理科となっています。ある意味算数で決まるといってもいいでしょう。大問1・大問2は、基礎的な知識を問う問題であり、失点は許されません。大問1の果物の種子をかき入れる問題などは、低学年のうちに実際に包丁を持たせて料理などをやらせてみることが大切です。
来年度は、天体の問題が出題されるかもしれません。天体は苦手な子が多いので、出題されると若干平均点が下がり、差がつく可能性もあります。
合格に必要な得点率は85%、合否を分けた1題は特にありません。
まとめ
全体に易化傾向にありますが、来年度は大半の小学生が苦手とする天体分野の「日食」が多くの中学校で出題されることが予測されますので、難化する可能性が高いです。
3~4年生の間は、参考書や問題集は必要なく、「図鑑」をバイブルにしてください。動植物を育てたり、興味のある実験を行ったりするほうがより効果的です。しかし、6年生になって「図鑑」をじっと見ているのは現実(勉強)からの逃避と思われますので、注意が必要です。
理科の計算分野は、算数で比例・反比例・比・相似を習得するまではやっても無駄です。6年生になってからやりましょう。また、志望校によっては、5年生か6年生のある時期に知識を系統立てて一気に整理することが効果的です。
理科は制限時間が短いことから、過去問を解くのにそれほど時間を要しません。したがって、志望校別の対策もあまり早くから取り組む必要はなく、今回のように傾向がわかっているのならば、6年生の途中まではどこを受験するにしても、通常の勉強および弱点の補強で十分間に合います。