夏休みの準備を始める [中学受験 4年生]

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。4年生を対象に、夏休みに向けて準備しておくべきことについて取り上げます。



■夏休み前までに、学習のペースづくりを

6月には、多くの塾で夏期講習の申し込み受け付けが始まります。それとあわせて、夏休みの大まかなプランを立てておくとよいですね。夏休みが始まるまでに、ぜひやっておいていただきたいのが学習ペースづくりです。9月から、受験勉強が本格化して学習量が増えますので、今のうちに学習習慣を付けておかないとこなしきれなくなるのです。

多くのお子さまにとって、「受験勉強」は生まれて初めての経験。塾の授業1回分の予習・復習が1日で終わらないなど、まだ学習のペースがつかめないというかたも多いのではないでしょうか。気分に引きずられて勉強が進まないのは、この年齢の子どもにありがちなことですが、「勉強しなさい」と叱り付けても学習習慣は付きません。

まず、大切なのは「できた!」という達成感を味わわせてあげること。そのために、計画表を作って、できたらシールを貼るとか、シールが10個たまったら好きなものを買ってあげるといった「ごほうび」作戦です。
モノで釣るのはどうか、というお考えもあると思いますが、学習習慣づくりのきっかけにはなります。ぜひ工夫して、お子さんのやる気を刺激してあげてください。ただし、こういった外的刺激だけでは、意欲はいつまでも続きません。意欲を継続させるために必要なのが、「好奇心」です。



■思考力の素地となる「好奇心」を育てる

2020年度から実施される新しい大学入試の方向性を踏まえ、中学入試でも思考力や応用力を問われる問題が増えています。
たとえば国際基督教大学(ICU)では、新しい大学入試のモデルとして「総合教養(ATLAS)」の試験を2015年度から課し、その試験問題を公開しました。これは、15分の講義を聴いてから問題に答えるという形式で、今回のテーマは環境問題。講義では、ペットボトルや食品包装材などの身近な話題、飛鳥時代に天皇に献上された石油の話、宇宙から見た地球などさまざまな視点から環境問題について述べ、設問では、資料と講義内容の関連を問うもの、グラフの読み取りや計算など、幅広い角度から考えることが求められていました。また、講義中、講義者のドイツでの体験と関連して、バッハ作曲の「G線上のアリア」が流れたのが印象的でした。新しい大学入試も、芸術関係の強みを評価する方向に動いています。

来年以降の中学入試でも、これに近い形式の出題を行う学校が出てくると見られています。このような総合問題には、付け焼き刃の知識では歯が立ちません。自分の興味を手がかりに、答えを導き出していく思考力が不可欠です。「おもしろい」「好き」「もっと知りたい」という気持ち・好奇心は、思考力の素地であり、学び続けるための種火のようなものです。そして、徐々に抽象的な思考もできるようになってくる4年生は、好奇心を育てるのにベストの時期といえます。好奇心を育てるのが「遊び」です。夏休みに向けて、ぜひ楽しい遊びの計画をたくさん立ててください。



■「生」「本物」に触れて大いに遊ぶ夏休みに

せっかくの夏休みですから、ぜひ海や野山へ出かけ、自然にふれてください。ご親戚の家や離れて暮らすお友達の家など、知らない土地に行くだけでも刺激になります。美術館や博物館、劇場やコンサートホール、サイエンスツアー、講演会などもよいですね。ポイントは生で「体験する」ということです。人と会って話すこと、自然や生き物に触れること、芸術作品をじかに目や耳で味わうこと、知らない町を歩くことは、五感にさまざまな刺激を与えてくれます。「初めての経験」で「わからない」からこそ、もっと知りたい気持ちが生まれてくるのです。本やパソコン・スマホの画面だけを眺めていても、なかなか好奇心はわいてきません。

4年生の2学期以降は、いよいよ受験勉強も本格化し、みっちりと学ぶ覚悟が必要となってきます。また、5、6年生の夏休みはさらに忙しくなり、思いきり遊べる日は少なくなります。
ですから、この夏こそ親子で大いに遊び、忙しさに負けない好奇心を養っていただければと思います。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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