【回答:早川尚子】家庭学習・家庭内コミュニケーション<その1>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。

本を読まないわが子への働きかけは?

短時間でできる、国語に役立つ勉強法は?

「印つけとメモ書き」を教えたいが、親が苦戦中…

本を読まないわが子への働きかけは?

本を読まない子にどのように働きかけたらいいでしょうか?
姉弟同じに育てたつもりですが、上の子は本の虫、下の子は図鑑や車関係の本しか興味がなかったというのが、かつてのわが家の状況でした。子どもの友達の図書館代わりになるほど本はそろえておりましたが、下の子は興味をもちませんでした。それを補うために、ずいぶん長い間読み聞かせをしていました。

「本を読みなさい」と言っても、読む気がない子には読ませることはできません。たとえ読ませたとしても楽しんではいないのですから、読書による効果と大人が思っているようなことは、身につきません。

読書をしない子にとって、受験のための国語読解の練習は、良いチャンスです。問題として与えられた文章は、読まなければ解けません。丁寧な読解法を習うことで読み方を知り、さらに少しずつ解くこともできるようになります。その練習の中で、「この問題の文章おもしろい」、「この先、読みたい」ということがよくあります。このときに初めて自分から望んだ読書が始まります。大きな変化です。
「本を読まない子どもたち」にも、夢中になって本を読むようになる可能性は十分にあります。

丁寧な読解法とは、「音読をしながら、印つけとメモ書き」をすることで、自分が読み取っていることを目に見えるようにしていくやり方です。この年齢の子どもたちが長文を読み解くにはたいへん有効であると思います。
物語的文章では、気持ちを表す言葉に「印つけ」をし、上の余白にプラス(+)、マイナス(−)と「メモ書き」をし、気持ちの変化を中心に読み取ります。
説明的文章では、何についての文章であるか(話題)、作者の意見、意見の総まとめの結論というように、「印つけとメモ書き」をして、文章の構成を目に見えるようにしていきます。詳しくは拙著『中学受験 お母さんが教える国語 』、『中学受験 お母さんが教える国語 印つけとメモ書きワークブック 』(共にダイヤモンド社)をご参照ください。

短時間でできる、国語に役立つ勉強法は?

毎日短時間でできて、国語に役立つことを教えてください。
朝の勉強
登校前の15分を使っての勉強は、夕方からの1時間の勉強にも相当するほど、効果的なものです。「家は無理だわ」とお思いになるでしょうが、夏休みは良いチャンスです。毎日、漢字、知識問題に取り組む時間として有効にお使いください。
漢字、知識問題の練習で大切なことは、今日ミスしたものはその場で覚え直しをして、さらに次の日の学習の最初にもう一度練習するということです。こうすると確実に定着していきます。

夕方からの勉強
読解練習として、毎日10分〜15分、問題集の短めの文章、あるいは、長文を区切って「印つけとメモ書き」をしながら音読し、その範囲でできる設問を1〜2問選んで解答するという習慣をつけると、「読むこと」と「解くこと」の習慣が早くつきます。毎日、短時間の積み重ねでも、1か月たつとずいぶん長時間、読解練習したことになります。
なお、低学年では、まだ読解練習は必要ありません。
漢字、音読、教科書の2行書写を毎日なさることをおすすめします。書写は、書き終えたら必ず親の目で教科書と比べ、一つでも書きまちがいをしていたら、その場で2行すべての書き直しをさせます。
正確に読み、写す作業は、学習の姿勢を正すと共に、高学年での丁寧な読解に確実に結びつきます。

「印つけとメモ書き」を教えたいが、親が苦戦中…

「印つけとメモ書き」は親自身も迷ってしまい、子どもに教えるときにあやふやなところがあり困っています。
「印つけとメモ書き」は、それをすることが目的ではなく、文字を追って答えを探し回っている子どもたち、あるいは、読み飛ばしている子どもたちを文章に向き合わせて、丁寧に読ませるためのひとつの方法です。

子どもと読み合わせをする前に問題文や、解答および解説を読んでおきます。そして、解説に沿って、設問の解答の根拠になるところに「印つけとメモ書き」をしておきます。こうすると、子どもと勉強するときには自信をもって「ここには印をつけようね」と導くことができます。

読み終えてすぐに解答をさせるのではなく、その前に「印つけ」を中心に、一緒に内容確認をします。こうして「読むこと」と「解くこと」を結びつけ、自分の「印つけとメモ書き」を十分利用して一人で解答できるようにと導きます。解答に沿った「印つけとメモ書き」なのですから、もちろん楽に解答できるはずです。正答すれば子どもたちも「このやり方、いいね」と乗り気になるかもしれません。

プロフィール



25年以上に及ぶ中学受験生への指導経験をもとに、サイト「国語の寺子屋」を立ち上げ、国語の原点である「丁寧に読む」ことを提示。著書は『中学受験 お母さんが教える国語』『中学受験 お母さんが教える国語 印つけとメモ書きワークブック』(共にダイヤモンド社)。

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