学校案内を比較して理解を深める[中学受験]

前回のコラムで、学校案内の優劣を比較しなければ、正確に理解することはできないという話をしたが、さらに項目を分類しなければ比較できない。どのような項目に分類するかは、保護者が志望校の学校案内で知りたいこと(学校全体の方針・教育方針<教育内容>・校風・入学後の学校生活のイメージ・我が子に合った学校かどうかなど)であり、志望校を決定するうえで重視する項目となる。

特に志望校の学校全体の方針は、学校案内を熟読しても、なかなか理解することは難しいようだ。教育理念や教育目標などを誰にでもわかるように図に表わしてくれる学校もあるが、伝統的な文章で外部の人にはわからない表現になっている場合は、わかる人は少ないと思う。できれば、伝統的な教育理念を理事長先生や校長先生の言葉でわかりやすく解説してくれるとよいが、そうでなければ、ほかのページに書いてある内容から類推するしかない。

また、どの学校の学校案内も同じようでわかりにくいという保護者も多い。実際に学校案内を調査してみると、確かに、載っている内容は一定の項目に分類できるくらい同じような学校案内が多いことがわかる。逆に、項目が一定であることを利用して、第1志望と併願校の学校案内を分析することができる。<表>は、第1~5志望までの学校案内を下記の項目で分類し、ページ数を一覧表にした例だ。
学校が学校案内を作成する際には、まず、全体のページ数を決め、各項目にどれだけのページを割くかを検討する。学校としては自信のある強みは強調したいため多くページを割くが、弱みにはページを割かないことが考えられる。もちろん、強調したい項目は同じでも、内容は学校ごとにまったく違うことと思うので、次は、その内容が、「我が子に合うか」「家庭文化に合うか」ということで志望校とすべきかどうかを検討する。

少し手間はかかるが、まだ志望校が確定していない場合は、<表>のように第1~5志望校を選び、学校案内を学校の方針・教務方針(教務内容)・校風・その他(入学後の学校生活のイメージ・我が子に合った学校かどうかがわかる内容など)のように分類し、ページ数で集計してみてほしい。複数の志望校で比較すると各校の強調しようとする項目が異なり特徴が明確となり、わかりにくかった学校案内が理解しやすくなると思う。学校案内を理解することとは、学校の特徴を明確にすることで志望校として確信が持てるようにすることだ。学校も人と同じで、長所もあれば短所もあり、第1志望校から第3志望までくらいは、どこに進学しても相応の満足が得られるはずだ。




【志望校の学校案内の分類例・分析例】

<学校案内の項目 分類例>

(1)教育理念・ビジョン・教育方針・校風概要・教育目標
(2)理事長・校長・その他幹部の先生のあいさつ
(3)教育内容:学力指導とその特徴(カリキュラム、時間割、補講を含む)
(4)教育内容:人間力指導とその特徴(行事、クラブ活動、生徒会活動を含む)
(5)教育内容:学力指導と人間力指導の融合したもの(キャリア教育を含む)
(6)教育内容:学力指導と人間力指導の結果(合格実績、合格体験談を含む)
(7)校風(入学後の学校生活イメージを含む)
(8)その他:総合的な学校イメージ(施設、校内環境、制服、沿革を含む)
(9)その他:我が子に合った学校か(キャッチフレーズを含む)
(10)その他:入試関係、アクセス・文化祭や学校説明会のお知らせ
(11)その他:イメージ・写真のみ、目次



<学校案内の項目別ページ数 分析例>

  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11)
第1志望校 2.7 0.7 7.3 6.0 0 3.0 3.7 7.3 0.8 1.0 0.8 33.3
第2志望校 1.7 1.2 5.3 3.2 0 1.0 4.7 7.5 2.8 1.8 0.2 29.3
第3志望校 0.5 1.3 3.8 4.3 0 1.0 6.7 4.3 0 2.0 0 24.0
第4志望校 1.0 0.2 7.8 3.2 0.2 1.0 4.7 4.3 0 2.0 0.3 24.7
第5志望校 2.2 1.0 13.0 5.2 1.2 2.5 9.8 3.3 0.5 3.7 1.7 44.0
平 均 1.6 0.9 7.5 4.4 0.3 1.7 5.9 5.4 0.8 2.1 0.6 31.1

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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