【回答:若泉 敏】家庭学習・家庭内コミュニケーション

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。

国立大学附属中学を受験する場合、1年生の今から準備できることは何ですか?

国立大学附属中学を受験する場合、1年生の今から準備できることは何ですか

今はまだ1年生ですが、漠然と国立大学附属中学の受験を考えています。私の希望としては、本人が生活を楽しみながら、そしてどんな境遇でも乗り越えていく精神力をもってもらいたい、と思っています。目標は本人が進みたいジャンルで、レベルの高い大学! が理想です。
勉強より、家庭生活の中で学ぶものが大きい。自立心や、謙虚に人の話に耳を傾ける姿勢を養おう

国立大学附属校には、一般的に、理解が速く行動力のある優秀な生徒が集まっており、教師陣も普通以上の力量を備えた各教科のエキスパートが多いことは確かです。そのような環境の中で、思いきり生活をエンジョイし、困難を乗り越えていく強い精神力を培おう、と考えるかたには適した学校でしょう。
しかし注意しなくてはいけないのは、国立大学附属校は、あくまでも教育実験校であるということです。けっして、著名な大学に入るために有利な学校ではありません。国立大学附属校の大学進学実績が良いというのは、ブランド大学に合格する能力をもった生徒が多く集まっていたという結果であって、学校が大学受験に向けて有利な取りはからいをしてくれるものではありません。また、公立の一般中学校のように学習指導要領の範囲を丁寧におさえる授業でもありません。例えば基本的な漢字練習や計算練習はご家庭で、自分で取り組むべきものであって、当たり前にやりなさいという立場です。そのうえで、実験校としての多種多様な学習課題が提示され、その課題解決に向けて総合力が出せる生徒を対象にしているといっていいでしょう。先進的、実験的な教育が受けられるという点も、国立学校の魅力あるところですが、お子さんの能力がそれに適合するものでなければ学校生活は、非常に苦しいものになる現実もあります。
国立大学附属校に入るには、興味関心が広く、チャレンジ精神旺盛で、積極的・意欲的に自立して取り組んでいく子どもを家庭教育の中で育成していかなければなりません。
それでは、具体的に1年生からどのような勉強や態度を育成していったらいいのかということです。
まず小学校1年のうちから塾に通う必要はありません。3年生くらいまでは、お手伝い、お出かけ、親子の遊び、親戚のつきあい、家族の行事等を通して、価値基準のもととなるものを保護者が伝えていくということが大事です。どういうことかというと、人と交わってコミュニケーションを積極的にとっていく体験から、人への思いやりや感謝の気持ちを抱く心地よさの基準設定が脳幹の奥底にしまわれるということです。
また、自分のことは自分でやるという自立心と、自分の足りないところや知らないことは、人にきちんと尋ねて、確認してから、また前進していくという姿勢も小学2~3年生くらいまでに身につけておきたいことです。
勉強はそのあとからで十分間に合います。学習を続けていくということは、本人がまず素直でなければいけない。いろいろな人とのかかわりの中で、与えられることを素直に受け取り、そして自分の心の中で考察を深め、また相手に対して的確に返していける。そのような良好なコミュニケーション能力を培っていくことは、国立大学附属校に入学したい場合には、必須でしょう。

プロフィール



学習塾「スクールETC」代表。思考力を問う公立中高一貫校の適性検査対策に、若泉式の読解力・記述表現力の指導法が注目を浴びる。適性検査問題分析研究の第一人者としても活躍。著書に『公立中高一貫校 合格への最短ルール 』(WAVE出版)などがある。

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