【回答:森上教育研究所】受験対策<その2>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。

時事問題の勉強の仕方を教えてください

6年生の春からの受験勉強で、慶應義塾湘南藤沢をめざせますか?

国語の受験勉強は不要だという娘。受験対策は必要?

時事問題の勉強の仕方を教えてください

5年生の息子です。時事問題については家庭でどのように勉強すればいいのか教えてください。今のところ本人の社会的な関心はあまりなく、新聞やニュースは見ようとしません。
小学5年生で、初めから時事問題に興味があるお子さんは、まずいないといってもよいでしょう。勉強して暗記した知識の量が増えていけば、興味がわいてくるのでしょうが、それを待っているのはイライラすると思います。
時事問題を普段から話題にするご家庭では、そうした会話から子どもが時事問題に興味をもつきっかけとなります。塾の授業にもすんなり入っていけます。そのようなご家庭のお子さんは、受験でも有利ですが、そのようなご家庭ばかりではありません。
新聞やニュースを見るように強要しても、なかなか長続きはしません。英語を話せるようになるために、「AFN(FEN)をつけっ放しにする」という話をよく聞きます。英語を聞くことに慣れ、知らないうちに話せるようになってしまうことがあります。そのようなときは聞こうとする意識はないので、苦痛はありません。
ニュースが多い「NHKをつけっ放しにする」ことで、同じような効果があります。強要されることもなく、画像と音声が自然に入ってくる環境をつくってあげます。塾のテキストを見れば、どのような時事問題が中学受験に出題されるかがわかりますので、確認しておきます。該当する時事問題がニュース・番組で流れた時には、その時事問題をどう考えるか、親子で話すと良いでしょう。

6年生の春からの受験勉強で、慶應義塾湘南藤沢をめざせますか?

現在小学6年生で、来春から中学生なのですが、今年度の初めに「慶應義塾湘南藤沢中等部」に行きたいと言い始めました。塾などにも行っておらず、今の成績ではレベルの高い学校は正直無理だと思うのですが、本人が言ったことなのでできれば行かせてあげたいと思います。
今から対策を始めるとしたら、どのような勉強法が効果的ですか。教えてください。
現在、どの程度の学力があるかによって学習方法は異なります。基礎力がなければ、基礎力をつけるところから始めなくてはなりませんので、時間的に「慶應義塾湘南藤沢中等部」を受験することには無理があります。「これまで塾に行っていないので、基礎力はあるが応用力はまだついていない」ということであれば方法はありますが、応用力をつけるための勉強といっても4科目について行うわけで、膨大な時間がかかります。

このような場合は「慶應義塾湘南藤沢中等部」の傾向に絞り込む勉強法しかありません。過去に出題された分野単元に集中して勉強し、それは当然、出題されない分野単元はやらないことになります。出題傾向が変わらないとは言えませんが、絶対的に時間が足りないので、このような方法はどうでしょうか。受験問題の過去問を分析すると、時々大きな傾向の変更がありますが、一般的にはあまり変わらないものです。

一般論として、小6から受験勉強を開始して「慶應義塾湘南藤沢中等部」に合格できる可能性は低いと言わざるを得ませんが、子どもの志望校に合格したい気持ちは大事にしたいものです。子どもが自発的に勉強しようとする芽を摘むべきではありません。

「慶應義塾湘南藤沢」は中高一貫教育の学校ですが、高校には、神奈川・東京・千葉・埼玉を除く地域に在住かつ在学する者を対象に選考を行っている「地域調整枠」という入試制度があります。上記地域外にお住まいであれば、高等部の受験を考えて、今から勉強するという方法もあります。実は早稲田、慶應は、中学受験や大学受験よりも高校受験のほうが合格しやすい場合もありますので。

国語の受験勉強は不要だという娘。受験対策は必要?

4年生の娘は普段から読書が好きで、漢字の書き取りも得意なので、国語の受験勉強は必要ないと言っています。まだ塾には入れていません。確かに学校のテストなどでは点数もそれなりにとれているので問題はないようなのですが、受験となると事情が違うのではないかと心配です。本人があまりに楽観的なので、信頼していいのかもと思ってもいるのですが、やはり何か対策が必要でしょうか?
お子さんの論理は、「国語は得意科目なので、受験勉強をする必要がない」ということだと思います。まだ小4で、塾にも通っていないので受験国語の難しさを実感できていないのかもしれません。

どれだけ国語の実力があるかを示すために、模試を受けさせてみてはどうでしょう。模試を受けさせれば、どれだけ国語の実力があるかを示すことはできると思います。
小4の国語ではまだ学力にそれほど差がついていないので、基礎学力のある生徒は模試成績が良い場合もありえますが、模試は学校のテストよりも難しいので、国語の模試の成績はお子さんの予想よりも悪くなるかもしれません。そして、このまま国語の対策を行わずに模試を受け続けていると、国語の成績は少しずつ下がっていくこともあると思います。

模試を受けさせるときは、結果が悪いことを想定して、模試を受けさせる目的をお子さんに納得させてから受けさせてください。そのうえで、模試の結果から「受験勉強をしなければ、得意科目の国語でも成績が落ちていくこと」や「得意科目の国語があることで優位に戦うことができる。しかし、国語でできるだけ多く得点するためには、受験勉強をして得意科目に磨きをかける必要がある」ということをお子さんに理解させてください。
お子さんに主体的に受験に取り組ませるためには、お子さんが納得して勉強することが重要です。
安易に模試を受けさせて、お子さんの国語に対する自信と受験勉強に対するやる気を喪失させては元も子もありませんから。

プロフィール



中学受験と私塾、中高一貫の中等教育と私学を対象とする調査・コンサルティング機関。私塾に『中学受験研究』、私学に『私学中等教育』を月刊で発行している。「わが子が伸びる親の『技(スキル)』研究会」を主催している。

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