【回答:森上教育研究所】志望校選び<その3>
「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。
「偏差値は学校の人気を反映する」ということは?
海外在住で帰国後に受験予定。帰国して準備を始めるタイミングは?
体操が好きでがんばっているわが子。体操の経験を優遇してくれる学校は?
「偏差値は学校の人気を反映する」ということは?
Q | 偏差値は学校の人気を反映するということをよく耳にします。偏差値自体の算出のしかたは統計的には理解していますが、人気を反映するということは、実際の入学者の偏差値とは異なるということなのかどうかを教えてください。 |
A | 学校の難易度を示す偏差値は、模試を運営している企業が、前年に、実際に受験した学校の合格者・不合格者の偏差値がどの程度かを基に、大学受験合格実績などの学校の人気要素を加味して決定します。 中学入試の学校偏差値は、その学校の大学合格実績とほぼ比例するので、その年の大学合格実績次第で多少左右されます。また、学校偏差値は、受験生・保護者の人気でも左右されます。例えば、学校が校舎を新設すると、多少ですが偏差値は上がります。しかし、加味した学校の人気要素で、それほど偏差値が上下することはありません。 その年に公表される学校偏差値は、難易度を示す指標であると共に、その年の合格可能性が80%・50%・20%の合否判定を示す指標でもあります。確かに、実際の合格者分布を見ると、模試の偏差値が低い人が合格する例や、逆に偏差値が高い人が不合格になる例もあるようですが、可能性80%〜50%のところで多くの人が合格しているのです。 受験生・保護者は学校偏差値を信頼して、受験生の偏差値が学校偏差値80%〜50%の学校から絞り込んで志望校を選定するので、合格可能性80%〜50%の偏差値の受験生が合格する例が多いと思います。つまり、入学者も合格可能性80%〜50%の偏差値の場合が多いことになります。 |
海外在住で帰国後に受験予定。帰国して準備を始めるタイミングは?
Q | 現在海外在住で、帰国のタイミングについて悩んでいます。子どもは、6年生の6月に、現地校の卒業式を終えてから帰国して受験準備に入りたいと言っています。こちらでも日本の中学受験対応の塾に通っていますが、親としては少しでも早く帰国して、日本の塾で準備をしたほうがいいのではと思っています。 志望校には帰国枠がないので、一般枠で受験します。そのためには、受験勉強のために早めの帰国を考えたほうがよいでしょうか? また6年生からの入塾は難しいと聞きますが、本当でしょうか? |
A | 相談は、帰国のタイミングですが、問題は「(1)お子さんに合った志望校を選定すること」と、「(2)志望校に合格するだけの学力をつけること」です。(1)ですが、志望校はお子さんが希望している学校ですか? お子さんが「現地校の卒業式を終えてから帰国したい」というのは現地校を気に入っているからではないですか? 帰国生は、自由な現地の学校と管理的な日本の学校のギャップに悩むことが多く、少なくともお子さんが自分の目で学校を見て、納得できる志望校を選定しないと、進学後に大きな問題を抱え込むことになります。 一般枠での受験ということですが、帰国生の多くが帰国枠で受験するのは、受験に有利なだけではありません。(1)の解決策として、帰国枠のある学校には、当然ですが帰国生が多いわけで、わかり合える友達ができやすく、先生も多くの帰国生と接して経験豊富なわけです。子どもにとって、帰国枠のほうが進学後の学校生活でメリットが多いのです。 (2)にも関連しますが、確かに6年からの入塾は難しい面があります。塾は4年(または5年)〜6年でカリキュラムを組んでいます。6年途中からの入塾では、これまでの指導内容を基にした指導ができないので塾はいやがります。また、お子さんにしても、過去にその塾で教えたことを知らないわけですから、当然、授業が理解しづらいことになります。 いずれにしても、なるべく早い段階で一度お子さんと一緒に帰国をして、(2)の学力をつけるための塾対策だけではなく、(1)の志望校の選定についても、帰国生を積極的に受け入れている学校も視野に入れて、再度お子さんも納得のいくものになるように準備すべきかと思います。 |
体操が好きでがんばっているわが子。体操の経験を優遇してくれる学校は?
Q | 体操が好きで、体操教室の選手コースに通っています。中学も高校も体操部があるところを希望しています。そのために勉強の時間が少なく、受験の準備はぎりぎりになりそうです。体操の経験を優遇してくれる学校や、推薦入学のある学校があれば教えてください。 |
A | 私立中学の入試では、推薦入試やAO入試は、ほとんど実施されていないのが現状です。「体操の経験を優遇してくれる学校」といっても、推薦入試やAO入試であれば体操の経験を生かすことはできると思いますが、学科試験では生かしようがありません。 首都圏の私立中学で推薦入試を行っているのは、共学校が10校、女子校が3校、男子校は皆無です。東京・神奈川は1校ずつで、千葉県と埼玉県が多いようです。それらの学校にお子さんがめざすような体操部がある可能性は低いとは思いますが、当たってみてもよいと思います。万が一、希望する学校があれば、推薦入試にチャレンジすればよいと思います。しかし、推薦入試の中身となる作文や面談で体操の経験談を活用するわけで、体操での推薦入学制度のように体操の実技で勝負ということはできないでしょう。 高校入試や大学入試でスポーツ推薦入学制度がある学校は、早稲田を筆頭に多くの有名校が名前を連ねています。体操で推薦入学をお考えであれば、中学からではなく高校または大学からの推薦入学を考えるほうが現実的ではないかと思います。 もしも中学から体操で有名な私立中高一貫校に入りたいのならば、それを励みに受験勉強をがんばるしかありません。しっかりとした目標とモチベーションがあれば、体力と集中力のあるスポーツマンは受験勉強でも成果を上げることができると思います。 |