【回答:日高のり子・森上教育研究所】志望校選び<その7>
「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。
説明会や行事の他に、学校の様子を知る方法は?
成績が悪くなったときにも、きちんと対応してくれる学校を見つけるには?
塾いらずの中高一貫校は?
説明会や行事の他に、学校の様子を知る方法は?
Q | 説明会や文化祭などの行事だけでは普段の生徒の様子がよくわからないと聞きますが、学校研究の方法を教えてください。 |
A | 【森上教育研究所】 学校説明会や文化祭では、在校生は来訪する受験生・保護者をお客さまとして迎えるので、在校生の普段の様子は確かにわかりにくいです。在校生の普段の様子は、登下校時に、最寄り駅から学校までの通学路での在校生同士の会話を聞くとわかります。志望校の生徒を判別できる制服などを覚えておき、最寄り駅や電車の中での言動を観察するのも良い方法です。 学校の様子についても、学校案内、学校ホームページ、学校説明会や文化祭の学校見学だけでは、すべてがわかるわけではありません。知り合いに志望校の在校生やOB・OGがいれば、情報を得ることもできますが、一人の生徒の個人的な意見を真に受けて、誤った情報で志望校を選定する恐れもあります。できれば複数の情報を入手して相違点がないかを分析し、信頼性の高い情報をもとに志望校を選定したいものです。面倒見のよい塾であれば、「志望校について知りたいことがあるので、塾の卒業生で志望校に在籍しているかたを紹介してほしい」というようなお願いをすれば、紹介してくれると思います。 しかし、何のために学校の様子が知りたいのかが明確でなければ、在校生やOB・OGにどのような質問をすればよいかわかりません。通常は「わが子に合った学校」見つけることが目的ですが、目的が明確ならば質問内容も決まってくると思います。 【日高のり子さん】 説明会も平日の午前中の回に行くと、休み時間や授業中など普段の生活を見ることができたのでよかったです。 ある学校では、休み時間が終わって今から授業が始まろうというときに、机の上にジュースの缶とヘアムースのボトルを出しっ放しにしている生徒がいて驚きました。教室に入って来た先生も、何もおっしゃらなかったのでとても違和感がありました。 学校によっては「見学は随時受け付けます」と、受験案内などに書いてあるところもあるので、普段の授業がある日に問い合わせて行ってみてはいかがでしょうか。 あとは塾の先生に志望校に通っている先輩を紹介してもらい、在校生に話を聞くというのもいいと思います。 登下校時に学校の最寄り駅に行ってみるのも、生徒たちの普段の様子がわかると思います。 |
成績が悪くなったときにも、きちんと対応してくれる学校を見つけるには?
Q | 中高6年間に成績の振るわない時期があっても、面倒見よく、成績復活可能な対応をしてくれる学校を見つける方法を教えてください |
A | 【森上教育研究所】 学校が面倒見のよさをアピールする時代ですが、それでも「成績の振るわない時期があっても、面倒見よく成績復活可能な対応をしてくれる」という保証をしてくれる学校はないでしょう。面倒見のよさをアピールしていても、具体的なことは明確に打ち出していないのが実態ではないでしょうか? 面倒見重視の学校は中堅・中下位校または大学附属校に多いようで、難関・上位校は自主性重視または自主性重視と面倒見重視の中間の学校が多いようです。しかし、これは一般論で、全く逆の教育方針・校風の学校もあります。 学校はシステムで動くというよりも、先生個人に任されていることが多く、成績不振の場合は担任の先生が対応するとは思いますが、どれだけ面倒見よく対応するかは先生個人の判断に任されています。親身になってくれる担任もいれば、そうでない場合もあり、学校としては担任がどこまで面倒を見るのか管理できていないと思います。 「成績の振るわない時期があっても、面倒見よく成績復活可能な対応をしてくれる」かどうかは、学校の内部のことで、学校案内や学校のホームページではわからないと思います。個別相談会で質問するのも一つの方法だと思いますが、質問する場合は「成績の振るわない時期があっても、面倒見よく成績復活可能な対応をしてくれる」システムがあるかどうかを聞くべきで、そのような先生がいるかどうかを聞いても意味がありません。 【日高のり子さん】 学校全体として「落ちこぼれをなくす!」ということに取り組んで、補習などに力を入れている学校はたくさんあると思います。 でもそれは成績が下位何パーセントとか、赤点をとったなど、明らかに進級や進学にかかわってくる場合で、上位の子が中位に落ちたということですと、面談で本人を交えて話し合い、原因を探り、励ますということしかできないのではないかと思います。 本人にやる気があれば、休み時間や放課後にわからないところを先生に聞きに行くということで、解決に至ることもあると思います。そのために職員室前に椅子やテーブルを置き、生徒が質問したり教えてもらったりできる環境を整えているという学校もありました。 その辺りを学校見学や説明会で質問されると、お話が聞けるのではないでしょうか。 |
塾いらずの中高一貫校は?
Q | 各中高一貫校進学後の通塾の状況(いわゆる塾いらずの学校)について教えてください。 |
A | 【森上教育研究所】 「塾いらずの学校」を打ち出している私立中高一貫校に通っている生徒も、高校2年生からは、塾・予備校に通う人が多くなるようです。生徒がランクの高い大学をめざすのであれば、それは無理からぬことではないでしょうか? 学校で、すべての受験対策を行うことは無理があると思います。 ですから、「塾通いが少ない学校」はあっても「塾いらずの学校」はないと考えるべきでしょう。「塾通いが少ない学校」というのは、(1)塾に通う生徒の割合が他校よりも少ない (2)塾に通う期間が他校よりも短い、ということです。 一部の学校では、有名予備校の先生を講師として迎え、受験のための授業を行っていますが、学費の範囲内で行う場合は時間数が少なく、実力をつけるところまではいきません。時間数を多くとなると、その費用は受講者負担となりますので、多少費用は少なくて済みますが塾・予備校に通うのと同じことになります。 大学受験は広き門となり、推薦入試やAO入試で60%が大学に入学する時代で、受験勉強で大学へ入学するのはわずか40%ですが、難関大学の難易度は下がっているわけではありません。 大学合格実績がある中高一貫校に入学しても、目標とする大学のランクが高ければ高いほど、塾に通う人は多く、また早い時期から通い始めるというのが実態です。 【日高のり子さん】 私が説明会に足を運んだ学校の中に、高校生の大学受験をサポートするために土曜日の午後、どこかの塾と提携して学校に塾の講師を招き、その特別授業が受けられるという学校がありました。 その他にも、大学の志望校別のクラス編成や、それに合った補習プログラムを組んでいて、「塾に行く暇なんて当校にはありませんよ」と、冗談交じりにおっしゃる先生もいらっしゃいました。 両校とも大学合格実績を上げることを目標に掲げており、「中学は入りやすい偏差値ですが、大学受験の頃にはここまで伸ばす力があります」と、話されていました。 でも、塾に通っている生徒はいるようで、自分の目標校と成績に合った選択をそれぞれしているのだと思います。 |