【回答:若泉 敏】適性検査・受検対策<その7>

「中学受検は親子の受検」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受検準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。

【回答:若泉 敏】適性検査・受検対策<その7>

受検のスタンスを教えてください

公立中高一貫校の模試の結果が散々です

公立中高一貫校を受検したいのですが、塾は必要でしょうか?

県立芦屋国際中等教育学校の受検で、英検2級は評価の対象になりますか?

受検のスタンスを教えてください

公立中高一貫校の受検に挑戦させたいと考えていますが、倍率の高さに驚いています。必ず受かるとは限らない受検に、どのようなスタンスで臨めばよいか教えてください。
学習や生活体験のさまざまな場面で、自分なりの考えをもてるような練習を親子一緒にしよう

確かに倍率が高いことから、一定の実力があっても必ず受かるとはいえないのが「受検」ですが、要は公立中高一貫校の適性検査に適合する実力を備えているかどうかです。
家庭の総力を挙げて一貫校が求めている【適性にかなう子どもを育成】していくこと、そして【受検に向けて取り組む過程は決して子どもの人生に無駄になることはない】と確信して進めることです。

適性検査では、例えば、「二つ以上の資料を見比べてある視点から考察を深め、自分なりの考えを条件に従ってわかりやすく」書いていかなくてはなりません。また、「他者の意見や考え方を踏まえて、自分の考えを構築していく、あるいは根拠を明示して自分の考えを主張していく」ことは、今後大学受験でも、また社会人になってからでも当然のように問われていくでしょう。こういう意識を日々働かせて、さまざまな資料や文章にあたっていくようにするだけでも、将来の学習に少なからず影響を与えていきます。それを親子のかかわりの中で今から意識して高めていくのです。
学習や生活体験のさまざまな場面で、親子が一緒になってかかわってきた成果を受検で発揮することができる。そんなチャンスが親子に与えられたのだととらえて取り組んでいくことです。そういうスタンスが、公立中高一貫校合格に近づくのです。

公立中高一貫校の模試の結果が散々です

公立中高一貫校の受検を希望しています。本人は通信教材で勉強しており学校のテストなどを見る限りほとんど理解はしているようです。しかし過去2回模擬試験を受けたのですが結果は散々で本人も親もショックを隠しきれないのが実際です。こつこつ勉強はしているのですが、なかなか成果が出ていません。模擬試験の答案も白紙に近く、しかも時間切れ。やはり学習の方法がまちがっているのでしょうか。よろしくお願いいたします
模試は本番とは違う。志望校の傾向をよく研究して対策を立てよう

公立中高一貫校用の模擬試験といっても、作成する会社によってさまざまです。そして通常は、全国規模で行われ、特定の公立中高一貫校を対象に問題がつくられているわけではありません。志望校の適性検査と適合しているとはいえないのです。ですから、結果が非常に悪かったからといって、過剰にショックを受けることはありません。
しょせん模擬試験は模試であって、本番とは違う試験であるということです。もっと前向きに対処していきましょう。
例えば、第一に、志望校の過去問と解答例を十分照らし合わせて、求められていることを正しくつかみます。第二に、模試の問題の解説をよく読んで、解答のポイントをつかみます。第三に、志望校の求めている課題と、模試の課題で似ている問題は、解ききるように練習をし、あまり関係ないと判断できる問題は思いきってカットしましょう。なお、これらの判断はあくまでも保護者が行うものです。

ところで、公立中高一貫校の本試験に関して、実は学校によって出題の傾向はかなり違います。志望する学校が「出題のねらい」や「入学してもらいたい生徒像」をHPで公表していますから、それにかなう「学力」や態度を本番までに高めていくことが大切です。
模擬試験の結果で一喜一憂されることはありませんが、せっかく模擬試験を受けているわけですから、返却された答案を十分に検討し復習しましょう。いったいどのような問題傾向の場合に白紙で出しているのか、時間切れを起こしている原因は何かなど、保護者が調査分析しなければいけません。学習の方向性はその志望する公立中高一貫校の課題に沿ったかたちで行う必要があります。保護者が「それはできない」という場合は、塾の指導にゆだねる道もあるでしょう。

公立中高一貫校を受検したいのですが、塾は必要でしょうか?

公立中高一貫校を受けたいのですが、塾へ行くか行かないかで迷っています。私は、ベネッセの「チャレンジ」の公立中高一貫コースの作文と、オプション教材だけでよいと思うのですが、子どもは、「塾も行ったほうがいい」と言います。どちらにすればよいのでしょうか?
通信教育も有効。しかし、それ相応の覚悟をして取り組むべき

ベネッセの公立中高一貫コースの教材は、かなり充実しています。現に作文とオプション教材だけで合格している生徒も多数います。保護者向けの参考資料も出ているので、それを十分に読み込んで、親子一緒に対策を立てていくという姿勢が大事ではないでしょうか。

公立の中学校に進学させたいと考える保護者の中には、初めから塾を毛嫌いして、その実際を知らない、という場合が少なからずあります。しかし、塾も多様であり、それなりの工夫をしていますから、活用することが有効な場合があります。ただ、目的に応じてどの塾を選ぶのかは、実は慎重な判断を要するのであって、習い事とは違って、好き嫌いで決めるわけにはいかないものです。お子さんの希望を勘案しつつも、やはり保護者が総合的に判断して決めることになります。

お子さんを塾に通わせないで受検させるなら、親はそれ相応の覚悟をして取り組むべきです。志望校の傾向を分析、検討をして、その対策を緻密に立てていかなければいけません。そのような努力ができる親のお子さんが、合格に近づくのです。親が忙しい、そこまで親が見ていくのはしんどい、面倒なことは避けたい、という保護者の場合には、塾に通わせることも考えていいでしょう。要は保護者の覚悟の問題です。

県立芦屋国際中等教育学校の受検で、英検2級は評価の対象になりますか?

兵庫県立芦屋国際中等教育学校の受検を希望しています。面接と作文のみの受検と聞いています。
娘は現在4年生で、英検準2級を取得しており、6年生までには2級に合格するつもりですが、英語教育に力を入れているこの学校を受検するのにプラスの要素になりえるのか教えていただければありがたいです。
英語への興味関心、習得意欲があると見られる点はプラス。面接で、自分の考えを英語で主張できるようにしておこう

結論からいえば、英検準2級または2級合格それ自体は、評価の対象になりません。
兵庫県立芦屋国際中等教育学校入学者募集要項にあるように、日本人の出願資格該当要件は「海外から帰国した児童(対象者30人)」、または「本校の教育目標を理解し、留学や海外での生活等を目指して特に入学を希望する児童(対象者20人)」です。英検合格は出願資格要件でも本校合格の要件でもありません。
「一生懸命がんばって、高校生レベルといわれる英検準2級の資格を小学4年生で取得したのだから、その努力を認めてほしい」という親の願いはわかりますが、英検合格実績と本校入学に適する実力があるかどうかは別物だということです。

一般的には英検資格のない児童よりはプラスになるといえるでしょう。それは英語についての興味関心と継続して習得する意欲があると見られるからです。しかし、大切なのは資格の有無ではなく、本当の実力と入学後の学習意欲です。それが作文と面接で試されます。

作文では、日本語文章の論理的な記述表現力と、入学後の他者との関わり方に関する考え方や、将来の進路実現のために学校の教育をどのようにとらえているかなどが検査されます。さらに面接では「学校の教育目標をどれくらい具体的に理解しているのか、留学や海外での生活等を主体的かつ具体的にイメージして、入学を特に希望しているのか」が問われます。英検2級資格者なら、日本の文化等について英語で返答を求められるかもしれません。自分の言葉で考えていることについて英語で主張できるようにしておきましょう。

プロフィール



学習塾「スクールETC」代表。思考力を問う公立中高一貫校の適性検査対策に、若泉式の読解力・記述表現力の指導法が注目を浴びる。適性検査問題分析研究の第一人者としても活躍。著書に『公立中高一貫校 合格への最短ルール 』(WAVE出版)などがある。

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