雙葉中学校1年生 H・Yさんのお母さま
あこがれの学校があったから、迷わずその目標に向かって努力を続けられた。
志望校合格に向けて、どのように準備をしていったのですか?
うちは、とにかく成績が安定せず、テストによって偏差値で20くらい上下するものですから、模試のたびにドキドキしていました。
算数は比較的安定していたのですが、国語が安定せず、最後まで苦労しましたね。読解問題や記述は最後までいま一つでした。苦手なところはわかっていたのですが、塾ではそういう面のフォローが弱かったので、国語は私が見ていました。
国語に関しては、語彙(ごい)が足りないのが大きく影響していると思ったので、英単語を覚えるように語彙を増やす訓練をしてとにかく覚えていきました。子どもには「やればできるんだから」と励ましていました。これによって、レベルを上げることはできました。
6年生になってからは、朝1時間の勉強時間をとって、計算・漢字をはじめテキストから抜き出した問題などをやっていました。雙葉は入試問題が独特ですから、そのための準備をしないとなかなか受かりません。正直、四谷大塚の雙葉コースに入っていなかったら合格はできなかったと思います。1クラスに20人いたのですが、皆さん各教室の優秀者ばかりですからレベルは高かったです。自分の力不足を思い知らされて落ち込んでいるときもありましたが、がんばってついていっていたようです。
いつ頃から手応えを感じていましたか?
正直なところ、なんとかなるかもしれないなと初めて思ったのは、入試直前の1月30日です。それまでは雙葉合格は絶対に無理だろうと思っていました。しかし、雙葉へのあこがれがモチベーションになっている以上、第一志望を変える気持ちはありませんでした。
何がいけないのかを検証してみると、理科や社会の点数が低かったのですが、これは学習不足が明らかだったので、入試直前は徹底して理科や社会をくり返しました。これはかなり効いたと思います。
結果的に合格したから言えることではありますが、うちの場合、模試の成績はほとんど参考にはなりませんでした。模試の成績はあくまでも、その時点での子ども弱点を見つける一資料であることを忘れずに、結果より中身をよく見極めることが大切だと思います。
子どもに負担を強いていることの是非(ぜひ)について内心葛藤(かっとう)を抱えながらも、親子で一生懸命に同じ目標に向かって進んでいくうちに、子どもとの信頼関係も深まって良い結果に結びつけることができた。
受験勉強をするうえで、大変だったことは何ですか?
超難関校をめざすということで子どもに大変な負担を強いているわけですから、こんなにやらせていいのだろうかと、親としてはずっと葛藤がありました。でも、親が揺らいでいては子どもも揺らいでしまうので、子どもにはそんな心の内を決して見せませんでしたが、心の中では常に揺れていましたね。よく母親は女優になれといわれますが、本当にそのとおりだと思います。
でも、5年生まではけっこう、子どもとやり合うこともありましたね。下の子どもを出産して、昼間は育児、夕方からは長女のケアと、本当に余裕もなかったですから。受験生に言ってはいけないことを山ほど言って泣かせてしまったこともあります。逆に6年生になってからのほうが、泣かせる時間ももったいないと、やり合うことはなくなりました。
でも、入試直前の1月は本当の意味で、いちばんしんどかったかもしれません。娘が出願した年、雙葉は出願数が増えていて、実際に1月校の千葉の女子校の入試の帰りに雙葉の出願をしたら、すでに受験番号が400番を超えていたのです。
その倍率の高さに本人も不安を抱えていたようで、慣らし受験のつもりで受けた千葉の女子校の試験から帰宅後、しばらくして「私なんてどうせだめだ」と急に泣き出したのにはびっくりしました。平気そうに振る舞っていても、子どもにはかなりのストレスだったのですね。しかし、安易に「大丈夫」なんて言えませんから、「努力は信じよう」と励ますしかありませんでした。
目標校があったからそこに向けてがんばってきたのですが、合格する保証なんてありません。失敗したときのことを考えると、正直怖かったです。
どのようにして、その不安な気持ちを乗り越えましたか?
結果はともかく最後までがんばろうと常に励ましていました。子どものグチや弱音も「そんなこと言って」と非難せずとにかく聞いてあげました。甘えたいときには突き放さず、「今は赤ちゃんでいい」と甘えさせてあげました。
娘は「ママが私のことを考えてくれて、120%やってくれているから、任せる」と言ってくれていました。受験を通して、娘との信頼関係を築くことができたと思います。
日常的には、まるつけやコピーとりを手伝ったり、宿題の整理をしたりと子どもの様子をよく観察して、負担が大きくなりすぎないように心がけていました。そして、煮詰まると、模試の帰りに2人でデートして、食事や買い物などをして時々ガス抜きをしてあげました。
お母さま自身のストレス解消はどのようになさっていらっしゃいましたか?
私自身は、昼間は下の子に手がかかり息抜きができないので、受験以外のストレスはためないように、この期間は、お酒や夜中のケーキも自分に許すことにしました。最後の半年は子どもを寝かしてからビールを飲んでいたので、4キロも太りました(笑)。
また、インターネットで同じようなママたちのコミュニティーに参加をしたのも、私にとって精神的な支えになりました。オフ会に参加して励まし合ったり、具体的なアドバイスをもらったりできたのもよかったです。すでに受験を経験されたかたのアドバイスは適切で、とても励まされました。例えば、模試の結果が悪くて落ち込んだときにも、「今の時点で合格可能性20%でも大丈夫」というようなアドバイスはとてもうれしかったです。情報が的確で役に立つことが多かったですね。
実際に通われてみていかがですか?
今は、学校生活をとても楽しんでいます。クラブは管弦楽同好会に入っています。入試でも算数はできていたので、今でも数学で困ることはありません。一方で英語は併設の小学校から上がっていらしたかたはやはり得意ですから差がつきます。勉強のほうはまだこれからわかりませんが、自分がいちばん行きたかった学校に通えているということは幸せなことです。
中学受験は大変なこともありますが、子どもと二人三脚でがんばれたことは、私たち親子にとって、とてもいい経験でした。
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<取材後記>
どんなに能力の高いお子さんであっても、難関校をめざすにはかなり子どもに負担をかけ、ときには追い詰めることにもなりがちだと思いますが、「ママが私のことを考えてくれて、120%やってくれているから、任せる」という言葉からわかるように、お子さんがお母さまのことを信頼して一緒にがんばれたことが今回の結果に結びついたように思いました。(教育ジャーナリスト 中曽根陽子)