2010年度入試で何が問われたか<理科>
首都圏主要10校の2010年度入試問題の分析結果をもとにした、Tサイエンス主宰の恒成国雄先生による、理科入試の出題傾向と今後の対策についての解説です。
(以下は、2010年4月に開催された森上教育研究所主催「わが子が伸びる親の『技』研究会」セミナーでの講演を抄録したものです)
2010年度入試 首都圏10校の入試問題分析<理科>
首都圏主要10校として、雙葉、女子学院、フェリス女学院、桜蔭、聖光学院、駒場東邦、栄光学園、麻布、筑波大学附属駒場、開成を分析対象校としました。
(1)設問数・解答形式
全設問を、解答の形式によって「記号・用語・数値」と「記述・作図」に分類しました。各校の設問数は、以下の表のとおりです。
※数字は設問数を表しています。
学校によって、設問数にかなりの違いが見られます。最も多い女子学院で60問、最も少ない栄光で16問でした。
次に、解答の形式ごとの各校の傾向を見てみます。
※グラフのカッコ内の数字は、設問数を表しています。
比較的、記述・作図問題の割合の多い、雙葉、フェリス女学院、駒場東邦、栄光学園、麻布は「記述・作図」型の学校といえるでしょう。駒場東邦は円グラフを見ると「記述・作図」の割合が少ないですが、長文で書かせる問題が多く出題されます。
記述問題の対策ですが、まずしっかりと理科の基礎知識を身につけましょう。そして国語力も必要ですので、国語をしっかり勉強することも実は大切な対策です。理科の記述の練習はその後でも十分間に合います。
(2)設問内容
設問内容を「知識・一般教養」と「計算・思考」に分類しました。各校の設問数は、以下の表のとおりです。
※数字は設問数を表しています。
思考問題は、その場で資料やデータを読み取って判断するような問題です。理科で差がつくのは「計算・思考」分野です。
次に、設問の内容について各校の傾向を見てみます。
※グラフのカッコ内の数字は、設問数を表しています。
雙葉、女子学院、フェリス女学院、桜蔭の女子校4校の傾向が似てきたことが、この数年の変化からわかります。どの学校も「計算・思考」分野が多く出題されるようになり、難度も高いです。特に桜蔭は計算量が最も多く、良問がそろっています。
また聖光学院と駒場東邦は、参考書や問題集には載っていないような一般教養の問題を出す点で似ています。
栄光学園と麻布は圧倒的に「計算・思考」分野の割合が多い学校です。この2校は傾向が非常によく似ていますので、併願していない受験生も両方の過去問を解くとよいでしょう。また今回分析した10校には入っていませんが、海城や渋谷教育学園渋谷、渋谷教育学園幕張とも傾向が似ています。
筑波大学附属駒場、開成は傾向が似ているというわけではありませんが、これらの学校の受験生は「知識・一般教養」分野ではあまり差がつきませんので、両校とも特に「計算・思考」分野が勝負になると思ってください。特に筑波大学附属駒場に関しては、物理・化学分野が難しいので、いかに物理・化学分野に時間を割けるかということが重要になってきます。
(3)合格するためにはどのくらいの能力が必要か?
各学校に合格するために必要な能力を、「知識力」「記述力」「思考力」「計算力」「データ処理力」「一般教養」の6つの点から分析したのが、以下のグラフです。
栄光学園と麻布は、例年傾向にあまり変化がなく、ここ数年ほぼ同じ形です。聖光学院、駒場東邦は極端な出っ張りのないバランスのよいタイプといえます。開成も今まではバランスのよいタイプだったのですが、今年度は計算問題が出題されませんでしたので、計算力がへこんだ形になりました。
女子校は、フェリス女学院と桜蔭の計算力が出っ張っています。フェリス女学院は今までは「記述のフェリス」ともいわれるような出題の傾向がありましたが、今年度は計算力も問われました。