考え込んで時間ばかりが過ぎてしまいます[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。



質問者

小6女子のお母さま


質問

図形問題が苦手です。考え込んで時間ばかりが過ぎてしまいます。なるべく過去問もやらせようと思いますが、やる時間がありません。


小泉先生のアドバイス

「すぐに解答を見て理解する」という効率的な方法でなければ間に合わないと思います

算数には、二つの勉強方法があります。一つは、なかなか解けない問題でも時間をかけ「自分で答えを出す方法」。もう一つは、しばらく考えても問題が解けない場合は「すぐに解答を見て理解する方法」です。どちらの方法にも長所と短所がありますから、そのお子さまのタイプや時期を考えて使い分けると良いでしょう。

まず「自分で答えを出す方法」ですが、算数を上達させるためには必ず経験しておくべき方法です。問題を読んでわからないとすぐ解答を見る生徒は、問題をあまり深く考えていないでしょうから、解答を読んでも本当に理解できていない場合が多くなります。つまり、なかなか解けない問題を「ウンウン」うなりながら10分、20分と考えることは、問題を解くために必要な論理的な思考回路を作るために必要な工程であると言えるのです。そして自分でなんとか答えを導けたならば、その喜びは何ものにも代えがたい達成感として算数に対する興味をアップさせることでしょう。
また、たとえ答えが得られない場合でも、そこまで苦しんだ頭には、解法がそれこそ渇きのあとの水のように吸い込まれていくことでしょう。「そうか! そういう手があったか!」という感動が、算数を考える力をさらに伸ばしていくことと思います。
さらに、一つの問題を粘り強く考えるという姿勢は、実際のテストで難問にあたった時にも大切です。最後の一秒まであきらめない精神力が、合格を決める場合があるからです。

それでは、「すぐ解答を見て理解する方法」はどうでしょう。この勉強方法も試験には必要です。一つの問題を5分から10分は集中して考え、それでも答えを導くための方針が立たない場合は、潔く問題の解答・解説を読みます。実は、この工程からも重要なことをいくつか学べるのです。
まず、時間を決めて問題に集中するということです。時間をかけて自分で答えを出す場合は、時として集中力に欠けてしまう場合があります。
また、問題が「解ける」のか「解けない」のかを見切る力を付けることにもなります。これは、実際のテストで「ステ問」を見つける練習でもあります。つまり、難しい問題を深追いするのではなく、できる問題で確実に点数をとるための練習です。
また、一定時間真剣に考えたあとは問題意識を持っていますから、解答・解説を読んでも、解くための「着目点」や「方針」をはっきり理解できるのです。「着目点」や「方針」が完全に理解できれば、次に同じような問題が出ても必ず答えを導くことができると思います。

さて、お子さまはどちらの方法で勉強すべきでしょうか。6年生になると算数はもちろん、他の科目も忙しくなりますから、「自分で答えを出す方法」で勉強する時間はまずとれないと思います。まして6年生の2学期ともなれば、それこそ過去問演習も行わなければなりません。この時期はとにかく効率を重んじるべきでしょうから、「すぐに解答を見て理解する」という効率的な方法でなければ間に合わないと思います。
しかし場合によっては、どうしても自分で解きたいとお子さまが言い張るかもしれません。そんな時はお子さまとよく話し合って、今何が大切なのかを理解させると良いでしょう。すなわちその時期に大切なことは、「算数だけでなく、全教科の総合点をアップさせて合格すること」だということです。お子さまもきっと納得して、効率的な勉強方法に取り組むと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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