転塾について[中学受験]

転塾に関する相談は意外に多い。転塾の理由は「塾が我が子に合わないため」ということだが、一口に「合わない」と言っても、教師・教材・カリキュラム・指導法・志望校の合格実績など難しいか易しいか、それとも塾の対応が良いか悪いか、それらを組み合わせると転塾理由もさまざまである。
転塾については、これまで実態がわからなかった。そこで入塾時期の調査を行った同じアンケートで、在籍生は転塾経験がどの程度あるか、また、どのような理由で転塾したかについても調査した。


【表1 塾を変えた経験はありますか?】
表1 塾を変えた経験はありますか?

転塾について「塾を変えた経験はありますか?」というアンケートに対し、有効回答は49件であった。<表1>の小計を見ると、転塾した経験がある割合は、約30%で、思ったよりも転塾経験のある在籍生は多い。また、転塾の割合が最も低いのは難易度B校在籍生で、次が難易度A校と難易度D校在籍生で、難易度C校在籍生は最も高く、難易度別の傾向は見られない。難易度A校在籍生の3分の1が、転塾経験があり、これらのデータから転塾は特別なことではないと言える。

アンケートを見ると、転塾理由は消極的な理由と積極的な理由があるようで、2例ずつ挙げてみた。
教師については「講師との相性に問題があったため」「塾内で先生が独立して新しく塾を始めたから」という転塾理由があった。
指導法については「塾の内容が見えていなかった。子どもがお客さん状態になっていた。寝ていても起こしてくださらなかった。アドバイスがまったくなかった。不安で不安で転塾しました」「大人数より少人数で厳しく見てくれるところのほうが本人に向いていると思ったから」という転塾理由があった。
また、志望校の合格実績については「娘の希望進学先にあったレベルの勉強をしていないから」「子どもの希望する学校向きの対策があるところを見つけたので」という転塾理由があった。

また、同時に転塾した結果が良かったかどうかもアンケートで調査した。転塾の結果について「塾を変えたかたにお聞きします。転塾して良かったと思いますか?」というアンケートに対し、「在籍校が不明」や「回答が空欄」を除くと、有効回答は49件となった。回答の選択肢は、以下のとおり。

【表2 塾を変えたかたにお聞きします。転塾して良かったと思いますか?】
表2 塾を変えたかたにお聞きします。転塾して良かったと思いますか?

<表2>の小計を見ると、転塾して良かったと思う保護者の「(1)そう思う」が73%を占めている。約70%の保護者は、転塾に成功していることになる。どの学校難易度でも転塾に成功している割合は高く、最も「(1)そう思う」数値が低い難易度B校でも50%である。転塾をすすめるわけではないが、受験までの時間が十分あれば、転塾してもそれほど失敗例はなく、むしろ転塾したほうが良い結果となるようだ。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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