「食の安全」への興味をきっかけに、私たちの「食」について考えよう

「食」に関係するニュースを耳にすることが多くなりました。子どもたちにとって身近で、家庭の食卓との関連も深いため、家族で話題にする機会も増えたのではないでしょうか。「食」は中学入試や適性検査で取り上げられることも多いテーマです。今回は、「食の安全」に関連させて、さまざまな視点から「食」について調べ、考えてみましょう。


クイズde基礎知識

食中毒はどうして起こる?/「フード・マイレージ」って何?/食品表示には何が書いてある?/食の安全はどう守られている?


時事問題を学ぶきっかけになる題材をクイズ形式でご紹介します。基本情報の整理に、親子で時事問題について話題にするきっかけに、入試・適性検査対策に、お役立てください。

Q1

生肉が原因の食中毒で、原因の一つとされるのは?


A. 黄色ブドウ球菌
B. ノロウイルス
C. 腸管出血性大腸菌


A1 正解は「C. 腸管出血性大腸菌」です。

腸管出血性大腸菌は、「O(オー)111」や「O157」などと呼ばれるもので、人間の体内で毒素をつくる大腸菌の一種です。牛などの腸内にあるため、加工中に肉の表面に付着してしまうことがあり、それが食中毒の原因となります。加熱することで死滅しますが、少量の菌でも食中毒を引き起こし、感染者の便などを介して広がるため、生肉を取り扱う飲食店や、感染がわかったときなどには注意が必要です。対策の一つに、飲食店などで生肉を取り扱う際に、細菌などが付着しやすい肉の表面を削り取る「トリミング」という作業があります。

Aの黄色ブドウ球菌は、人間の皮膚やのどの他、部屋の中などにも存在し、食品に付着して増える時に毒素をつくることがあります。そのため、素手で調理されるおにぎりやサンドイッチ、すしなどが食中毒の原因になることがあります。

Bのノロウイルスは、冬に流行しやすい感染症の原因となるウイルスの一種です。カキなどの貝類に含まれ、急性の胃腸炎を引き起こします。感染者の便やおう吐物から感染する他、乾燥したおう吐物などが空気中に広がることで、集団感染が起こることもあります。

厚生労働省による「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」では、「食中毒予防の3原則」として、菌を「付けない、増やさない、やっつける」ことを挙げています。その3原則をもとに「食品の購入・家庭での保存・下準備・調理・食事・残った食品」の6つのポイントについて、注意することが示されていますので、特に食中毒が気になる季節などに一度確認してみてはいかがでしょう。ご家族で協力して、それぞれできることを実行することが、食中毒予防につながります。

厚生労働省「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」パンフレット(外部のPDFファイル)
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/dl/point0709.pdf


Q2

「フード・マイレージ」って何?


A. 環境に優しい食料を購入するほどポイントがたまる制度
B. 食料の輸送による環境への影響を示す数値
C. 食の安全についての知識を問う検定制度


A2 正解は「B. 食料の輸送による環境への影響を示す数値」です。

食料を海外から輸入する場合、輸送に船やトラックなどが使われます。この輸送によって二酸化炭素が排出されるため、生産地から消費地までの距離が短いほうが環境に与える影響は少ない、と考えることができます。その影響を数値で表したのが「フード・マイレージ」で、「食料輸送量×輸送距離」で計算されます。

たとえば、1トンの小麦をアメリカのモンタナ州から東京に輸入した場合のフード・マイレージは10,327tkm(トン・キロメートル)ですが、北海道から取り寄せた場合は831tkmと10分の1以下になります。この場合、小麦を北海道から取り寄せたほうが、環境への影響が少ないといえます。

しかし、国産品が輸入品に比べてフード・マイレージが低いと言い切れるわけでもありません。たとえば牛肉の場合、飼料も含めてフード・マイレージを計算すると、国産の牛肉であっても、海外から輸入した飼料を使って飼育された場合、輸入品の牛肉よりもフード・マイレージが高くなる場合もあります。


フード・マイレージを国ごとに集計して比べると、食料自給率が低く、距離の離れた外国からも食料を輸入している日本は、他国に比べて数値が高くなっています。

日本では以前から、地域で生産された食料をその地域で消費する「地産地消」が推進されていますが、フード・マイレージは地産地消のメリットを数値で感じられるものだともいえます。


Q3

「この期限を過ぎたら食べないほうがよい」ことを示す食品表示は?


A. 消費期限
B. 賞味期限
C. 保存方法


A3 正解は「A.消費期限」です。

食品表示の一つである「消費期限」は、「安全に食べられる」期限を示したもので、弁当や生菓子など、長く保存がきかない食品に表示してあります。
消費期限と混同されがちなのがBの「賞味期限」です。「賞味期限」は、「おいしく食べられる」期限を示し、スナック菓子や缶詰、ハムなど、冷蔵や常温で保存がきく食品に表示してあります。
Cの「保存方法」は、直射日光を避けるなど、保存の際の注意事項を示したものです。

「消費期限」も「賞味期限」も、袋や容器を開けない状態で、表示されている「保存方法」にしたがって保存した場合の期限です。

その他、食品表示に示されているものとしては、アレルギーの原因となる物質や食品添加物が含まれているかどうか、遺伝子組み換え食品であるかどうか、などがあります。

このような食品表示によって、その食品を製造した企業は製品の品質を保証し、私たち消費者は安全性などを確認することができるのです。


Q4

食品に含まれる放射性物質については「暫定規制値」が定められ、これを上回る食品は市場に出回らないように規制されています。この根拠となる法律は?


A. 食品衛生法
B. JAS法
C. 食品安全基本法


A4 正解は「A. 食品衛生法」です。

「食品衛生法」は厚生労働省と消費者庁(内閣府)が所管する法律で、食の安全と私たちの健康を守ることを目的にしています。その観点をもとに、食品に含まれる放射性物質については、原子力安全委員会が示した指標を「暫定規制値」として、これを上回る食品は市場に出回らないようにしているのです。

「食品衛生法」には、飲食店や食品会社など、食品にかかわる仕事をする際に守らなければいけないことなども示されています。飲食店や食品会社にとっては、この法律が食の安全にかなった食品を提供するための基準となり、私たち消費者は、安心して食品を口にすることができるのです。

Bの「JAS法」は農林水産省と消費者庁(内閣府)が所管する法律で、Q3にあった「食品表示」の決まりなどが定められています。

この他にも、食品の安全に関する法律はさまざまあります。これらの法律をまとめる役割を果たすのが、Cの「食品安全基本法」です。

「食品安全基本法」は内閣府が所管し、それぞれの法律が正しく機能しているかをチェックし、各省の連携をよくして、食の安全が確実に保たれることを目的としています。そのために、さまざまな分野の専門家が参加する「食品安全委員会」が設置されています。
「食品安全委員会」は、科学的・中立的に、食の安全に関する調査や評価、生産者や消費者への説明、緊急時の対応などを主に行っています。

また、「食品安全基本法」には、「消費者の役割」についても示されています。私たち消費者にも、「食の安全」についての知識と理解を深め、安全な食品を選ぶ力を身に付けることが求められているのです。そしてそれは、「これから先の安全」につながっていくことですから、お子さまと一緒に「食の安全」について、調べたり、話し合ったりすることも大切です。



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