入試の結果と我が子への接し方[中学受験]

2009(平成21)年中学校入試全体の実質倍率を見ると四谷大塚エントリー校で男子平均が2.91倍、女子平均が2.93倍であった。合格すれば入学する確率の高い2月1日入試でも男子平均が3.16倍、女子平均が2.74倍である。2月1日入試を第1志望校とするご家庭が多いが、その場合、第1志望校に合格できる確率は30%以下ということになる。

第1志望校に合格できる確率が30%以下ならば、チャレンジ校を受験する場合はもちろん、そうでなくとも、不合格を覚悟しなければならない。合格できるだけの実力があっても受験に絶対はない。ショックの大きい第1志望の不合格や、最悪の事態としての全滅をも想定しておくべきであろう。
合格する可能性が高い学校がダメだった時に、子どもに対し保護者が取るべき態度は、どのようなものであろうか? 保護者もショックであろうが、そんな時でもやさしく我が子を包み込んであげなければならない。子どもと一緒になって落ち込んでいるだけでは、保護者の役割が果たせない。

前回のコラムで紹介したA中学校とB中学校はどちらも四谷大塚の偏差値で60前半の人気校だが、入学した生徒のうち受験当時A中学校とB中学校を第1志望校にしていたのは、32%と19%であった。第1志望校に合格できる確率は、学校によって第1志望校として受験する生徒の割合が異なるので実質倍率とは意味合いが違うが、東京の例ならば、2月1日入試1回だけの学校でもなければ、入学者のほとんどが第1志望校となることは少ない。

A中学校在籍生とB中学校在籍生に在籍校の満足度を調査するため、「保護者から見て、在籍校は我が子に合った学校か?」という質問をした。アンケートを行った6~7月は、入学してから2~3か月後となる。第1志望校ではなかった68%と81%の入学者は、在籍校にどれだけの生徒が満足したのだろうか?
アンケートの回答を集計した結果、A中学校在籍生とB中学校在籍生の保護者のうち「在籍校は我が子に合った学校」と回答した保護者は、実に93%と86%という高い数値であった。
なお、学校で行うアンケートは保護者が学校に気を使ってしまうため、当アンケートは無記名で行ったが、「在籍校は第1志望校ではなかった」と正直に答えた人が多かったことからも、信頼できるデータと思われる。このことから、第1志望校に入学できなかったからといって、不本意入学となって、学校生活に満足できないわけではないことがわかる。

A中学校とB中学校で入学後の満足度が高いのは、入学生への対応が良かったのかもしれないし、併願校を選定する時に「我が子に合った学校」を探し出せたのかもしれない。
しかし、何よりも第1志望校に不合格となり、併願校に入学した時、両親が子どもに行う心のケアが良かったからだと思う。子どもへのケアの基本は、子どもの気持ちを思いやったうえで、入試体験の意義を認め、子どもががんばったことを評価してあげることだ。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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