文章を正確に理解するのが難しいようです[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


質問者
小5女子のお母様

質問
国語にも多少言えることなのですが、文章題以外でも問題そのものをしっかり理解せず進めてしまう傾向にあります。本当の答えはわかっているのに、違うことを問われていると思い、間違った答えを書いてしまうケアレスミスが多いです。本当はできる問題なのに、100点が取れずがっかりすることもしばしば。本は好きで、4月から70冊以上読んでいます。暇さえあれば本を読んでいるのですが、文章を正確に理解するのが難しいようです。

小泉先生のアドバイス
読む「目の細かさ」を使い分ける

本が大好きで「暇さえあれば本を読んでいる」というのに、「文章を正確に理解するのが難しい」のはなぜでしょうか。おそらくお子さまは、「ストーリーを楽しむ」といった読み方をされているからだと思います。
本の読み方は人によって、あるいは目的によっていろいろです。物語の展開をドキドキハラハラしながら、ページをめくるのももどかしく読み進めるのは読書のだいご味です。あるいは味わいながら、それこそ一文字一文字を大切に読みたい文章もあります。
本以外で文章を読む場合は、さらに違った読み方が必要になってきます。たとえば契約書を読む場合、読みなれていない人は特に、それこそなめるように文字を読みます。そうしないと文章の内容が頭に入ってきませんし、もし間違って理解したら大変だからです。
このように文章によって「読むスピード」や「集中度合い」、いわば「目の細かさ」を我々は経験的に変えています。ですから難しい専門書などを読む時は、机に向かって重要なところに鉛筆で線を引きながら読み進めるでしょう。あるいはエッセーなどは、ソファーに寝そべりながら読むことも可能だと思います。
しかし経験値の少ない子どもの場合、文章によって「目の細かさ」を変えることができない場合があります。たとえば国語の問題文を「ストーリーを楽しむ」レベルで読んだだけでは、細かい心情を問われる問題には答えきれないでしょう。あるいは算数の問題文を読んでも、内容を誤解してしまう可能性があります。

ということで、お子さまにも「文章によって目の細かさを調整する」ことを教えてあげれば良いと思います。もちろん「目の細かさ」と言ってもよくわかりませんから、「もっとていねいに」「集中して読みなさい」などという言い方になりますが、それでもまだ足りません。もっと具体的に教える必要があります。たとえば算数の文章題の場合は、大切なものは「条件」と「求めるもの」です。そして集中して読むために、「条件」や「求めるもの」にそれぞれ下図のような印を付けながら読むように教えるのです。

【例題】50円の切手と80円の切手を合わせて11枚買うと、代金は760円でした。それぞれ何枚買いましたか。

上記のように印を付けながら読むことで、「条件」や「求めるもの」が明確になり、それによりその解法までも思い浮かぶようになると思います。すなわち、「それぞれの単価と全体の枚数および代金がわかっている問題はつるかめ算で解ける」というように、解決方法を見出せるということです。
ここで大切なことはお子さまに、算数の問題を考える場合はこのレベルの注意力、すなわち「目の細かさ」が必要なことを意識させること。また手法としては、大切な箇所に線を引きながら読むことを経験させることです。
そしてこれらの経験をとおして、「解けた!」「間違えなくなった!」などと実感させることです。小学生の場合は、ここまで教えないとなかなか理解できないようです。

なお、国語における問題文の読み方についても「目の細かさ」を調整する必要はあると思いますが、楽しみの読書についてまで口をはさむ必要はないでしょう。お子さまの読む本が年齢とともに変化してくれば、自然に読み方も変わってくると思います。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

子育て・教育Q&A