志望校と偏差値とモチベーションを考える その4[中学受験]

首都圏の中学受験生の保護者(452名)に対し、2007(平成19)年11月にアンケートを実施した。「志望校決定にあたって、誰の決定権が一番強かったか?」という設問で、志望校の決定権が最も強いのは、受験生本人(58.7%)であった。しかし、学校関係者からは、「志望校を子どもが決めているというのは建前で、実際には、保護者が決めているのではないか」という意見も寄せられた。
今回、数は少ないながら、御三家を含む有名校の在籍生の保護者に同じ質問を行う機会があった。その結果は、受験生対象の時とほぼ同じで、やはり志望校の決定権が最も強いのは受験生本人(60.0%)であった。また、今回の在籍者アンケートでは、誰の決定権が一番強かったかだけではなく、「志望校の決定方法」を問う設問も追加した。決定方法は「候補を絞り込む」「志望校を決定する」の2段階に分けて、誰が主体となるかがわかるようにしたので、表を見ると、どの決定方法を行うご家庭が多いか、あるいは少ないかがわかる。

【表 受験生本人が最も決定権が強い場合の志望校決定方法】
表 受験生本人が最も決定権が強い場合の志望校決定方法

志望校の決定方法
1.子どもが候補を絞り込み、子どもが志望校を決定する
2.子どもが候補を絞り込み、親子で協議して志望校を決定する
3.親子で候補を絞り込み、子どもが志望校を決定する
4.親子で候補を絞り込み、親子で協議して志望校を決定する
5.保護者が候補を絞り込み、子どもに志望校を決定させる
6.保護者が候補を絞り込み、子どもにアドバイスして志望校を決定させる
7.保護者が志望校の候補から志望校を決定し、子どもに納得させる
8.その他:「第1志望は本人の希望。併願校は母親が探した」など

1と2は、「候補を絞り込む」段階から子どもに委ねるパターンで、特に1は「志望校を決定する」も子どもに委ねる、というかなり放任主義のご家庭である。3と4は、親子で「候補を絞り込む」パターンだが、3の子どもが「志望校を決定する」が37%で最も多い。
5と6は、保護者が「候補を絞り込む」パターンで、子どもに「志望校を決定する」権限はあるものの、かなり保護者が主体になっている観がある。特に、6は9%と数は少ないが学校の言う「親の建前」に近いかもしれない。保護者の持って行き方にもよるが、子どもは志望校を自分で決めたというよりも、決めさせられたという感覚になりうる。
7は、子どもに決定権がない志望校決定方法なので、「受験生本人が最も決定権が強い」と回答した保護者に7を選択した人はいなかった。

以前から感じていたことだが、受験生本人に志望校を決定する権限を与えることが、受験勉強へのモチベーション(やる気)を引き出す効果的な方法だと思う。つらい受験勉強なので、途中で放り出したい気持ちになる時もあると思うが、「自分で決めたことは貫こう」と我慢ができる。親が決めたことだったとしたら、放り出してしまうかもしれない。
確かに、人生経験の少ない子どもに決定権を委ねることはリスクがあるが、保護者が前面に出ないように注意しながら、子どもが決定できるようにアドバイスしてあげれば問題も起きないだろう。志望校の決定方法の中でモチベーションを引き出す効果が高いのは、「3.親子で候補を絞り込み、子どもが志望校を決定する」だと思う。3を選択した保護者が最も多いが、その裏側には、勉強のモチベーションを引き出そうとする、親の思いが隠されているように思える。

「3」を選択した保護者の子どもが在籍している学校名:
麻布(1)、跡見(1)、栄光(1)、桜蔭(1)、海城(1)、暁星(1)、晃華(1)、芝(1)、渋谷教育渋谷(1)、巣鴨(2)、フェリス(1)、武蔵(1)(あいうえお順、カッコ内は人数)

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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