志望校と偏差値とモチベーションを考える その2[中学受験]

偏差値は能力ではなく、順位を示す数値なので、ライバル以上に勉強しなければ偏差値は上げることはできない。いくら自分ががんばって勉強してもライバルもがんばれば順位は変わらないからである。たとえば、がんばって勉強して上位になったとする。上位の生徒はよく勉強をするので、これまでと同じだけ勉強しても順位は上がるどころか、上位の生徒よりも勉強しなければ偏差値は下がってしまう。
下位の生徒は勉強をしない生徒が多いので、同じ順位の生徒よりも勉強をすれば順位を上げることはたやすいはずだが、実際には、下位の生徒は、勉強する量も少なくコンスタントにする習慣もないので、偏差値を上げることは簡単なことではない。
これは、不得意科目にも言える。不得意科目は苦手だから勉強することを避けるようになる。勉強をしなければ、当然、偏差値は下がる。しかし、何かの原因で不得意科目を勉強するようになり、勉強するコツをつかめば、あっという間に偏差値は上がる。しかし、ある程度まで偏差値が上がった時点で、それ以上は同じ勉強方法と勉強量では上がらなくなる。同じ偏差値の生徒と同じ勉強をしていては、偏差値を伸ばすことは難しいのである。

現在5年生であれば1年間で伸ばせる偏差値はどのくらいか? この現実的な数値がわかったうえで、第1志望を設定すべきだ。これまで話してきたように、偏差値を伸ばすことはなかなか難しいが、1年で5~7程度伸ばすことができれば成果があったと考えるべきだ。偏差値が10伸びることもまれにはあるが、可能性が低いので、あまり期待すべきではない。
このことから、子どもが「がんばれば、手が届くかもしれない」という目標の範囲として、現在の受験生本人の偏差値よりも5~7程度高い学校を第1志望にするとよい。子どもに「自分の偏差値よりも5~7程度ならば成績を上げられるかもしれない」と思わせることができるかどうかがポイントだ。
子どもが「できるかもしれない」と思えれば、勉強に対するモチベーション(やる気)を引き出すことができる。同じランクの生徒で、同じだけ勉強したとしても、モチベーションが高い生徒のほうが集中力は高く、学習効果は高まるはずだ。結果として、順位が上がり、偏差値も高くなる。

万が一、思った以上に偏差値が伸びて第1志望の偏差値を超えたらどうするかだが、心配はいらない。第1志望を下げれば大きなトラブルにもなるが、成績が伸びて第1志望を上げても何の問題も起きないものである。その時点で子どもがチャレンジできる学校に第1志望を変えることで、さらに子どもの学習意欲は増すことも考えられる。おそらくそのような状況になれば、子どものほうから第1志望を上位の学校にしたいと言いだすのではないか。

まずは、子どもが、「できるかもしれない」と思える環境で、チャレンジする気持ちを大事にしてあげたい。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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