千葉県立千葉中学校「第2回千葉中アカデミア」ルポ

役所、病院、テレビ局、出版社などで生の声を聞き、
発表内容も興味も深める

発表を見聞きしてなによりも驚いたのが、中学1年生とは思えない内容の豊かさでした。例えば国際理解のゼミでは、全員が、実際の映画で使われた日本語の字幕の研究を行っていました。当然、中学1年生の学習範囲にはとてもおさまりきらないほど難しい英文法や表現が含まれています。しかし、誰もが内容を理解しているのはもちろん、登場人物の気持ちに合わせて大きく表現を変えたり、アルファベットにかけた遊びの表現を五十音におきかえたりと、翻訳ならではの工夫にも丁寧にふれていました。

生徒たちの行動力にもうならされました。書物やインターネットだけにとどまらず、役所、病院、テレビ局、食品工場、出版社、玩具メーカー、ゲーム制作会社など、実にさまざまな場所を訪れ、また、弁護士やテレビ局の番組制作担当者、気象庁職員、漫才コンビ、花火師などさまざまな人の生の声を聞いて、内容を深めているのです。例えば、「東京23区で江戸川区が最も出生率が高い理由」「欧米と日本での心臓手術に対する考え方の違い」など、大人でも勉強になることがたくさんありました。しかも、これらの取材先へのアプローチは、先生がおぜん立てするのではなく、生徒たちが自ら行っているというから驚きです。



俳優という職業への興味からテレビドラマというテーマを選んだ生徒は、テレビ局で取材をするなかで、「今という時代を反映させていかなくてはいけない」という言葉を聞き、ドラマを見る視点を深めていったといいます。そんなふうに、初めは好奇心から選んだテーマでも、調査を通じて新しい課題や疑問が生まれ、興味が深まっていった様子が、生徒たちの熱心な表情から伝わってきました。



クイズ形式、芝居仕立て、香り、実演…
さまざまな工夫から感じられた「伝えたい」という強い思い

さらに印象的だったのが、発表の工夫の数々です。キーワードの部分を紙で隠してクイズ形式にしたり、補足する内容を書いた紙をはり重ねながら説明したり、スケッチブックを用意して紙芝居風に展開したりと、それぞれが独自のアイデアを競っていました。
成田空港をテーマに何人かの生徒の共同研究として行った発表では、管制塔、航空機などの手作りのセットを用意し、空港ができるまでの経緯を芝居仕立てで紹介。イングリッシュガーデンに関する発表では、バラの香りを振りまいて嗅覚(きゅうかく)にも訴えていました。食品の中の「うまみ」成分についての発表で、うまみの元になるグルタミン自体はあまりおいしくないことを伝えるため、実際に自分が飲んで、その表情を参観者に見せていた生徒もいます。薬をテーマに選んだ生徒は、取材先で入手した、自分が使う薬について知るための「お薬手帳」の活用を呼びかける小冊子を配っていました。



こうした工夫から感じられたのは、発表の内容を少しでもわかってほしいという、生徒たちの熱意です。自分で興味をもったテーマについて、深く調べてみたらいろいろなことがわかり、さらに興味が深まった。その喜びや興奮を、一人でも多くの人に伝えたい──そんな気持ちから、自然とさまざまなアイデアが浮かぶのでしょう。こうした一人ひとりの興味に合わせた学習だからこそ、小手先の技術ではない、本当の意味でのプレゼンテーション能力が育つのだと実感しました。



継続的な指導があるからこそ
生徒たちがもっている力を存分に引き出せる

こうしたエピソードから、「さすが千葉中生!」と感じられるかたも多いのではないでしょうか。確かに、同校の生徒たちが、もともと高い資質をもっていることは事実でしょう。しかし、この日の発表会がこれほどのものになった要因は、それだけではありません。当日、参観者として訪れた保護者の皆さんは、こんな感想を語ってくれました。

「(半年前の)第1回より、ずっとわかりやすかったですね」
「前回は、ただ書いてあるのを読んでいただけでしたが、今回は内容をちゃんと理解して、自分の言葉で説明していました」
「家から取材する会社に電話するときも、最初はぎこちなくてハラハラしましたけど、今ではずいぶん慣れたようです」
「家でも、親を相手に質問の受け答えを練習しました」
「小学生のときには人前でしゃべるのはニガテだったのに、よく成長してくれたと思います」



豊富な内容やさまざまな工夫は、これまでの経験や失敗、試行錯誤の中から生まれたものだったのです。千葉中では、普段から「総合的な学習の時間」を利用して、テーマを調査・研究しています。発表会も今回で2回目。単発のイベントではなく、継続的な活動の一環として行っているからこそ、生徒たちがもっている高い能力を自然と引き出していくことができるのでしょう。学年主任の富谷利光先生も、今回、その手ごたえを感じたようです。
「実は、前回よりも準備期間は短かったのですが、内容も発表のしかたも、良くなっていたと思います。まだ課題もありますし、個人差も見られますが、今回の発表を元に、これから生徒たちが力を積み上げていけるよう、指導していきたいですね」


自ら課題を見つけ、調べ、考え、伝える力は、社会を生きていくために求められる、本当に必要な力といえます。いきいきと発表する生徒たちの表情は、高校受験にとらわれず、6年間かけてじっくりと指導ができる公立中高一貫校が、そんな力を伸ばすためにうってつけの環境だということを、教えてくれました。


プロフィール



「進研ゼミ小学講座」は2020年新課程に対応して、リニューアル。基礎から応用までの学力向上はもちろん、自ら学ぶ姿勢を身につける。
学んだ知識を使って、自分なりの答えを導き出す。そんな体験を繰り返すことで、「自ら考え表現する力」を育んでいきます。

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