学校訪問を行う意義 その4[中学受験合格言コラム]

中学入試で、保護者が我が子にしてあげられる最大のことは、モチベーション(学習に対するやる気)を向上させることではないか。小学生の遊びたい盛りに受験勉強に立ち向かうことは、子どもにとっては忍耐のいることだ。子どもの気持ちとは反対のことをさせなければならない母親の子育てはさらに大変なものだろう。しかし、子どもが保護者の思いどおりに勉強しないからといって、単に説教しただけでは、子どもがやる気になってくれたとしても、その反動が中学生以降になって出ると思っておいたほうがよい。しかも子は保護者の表情をうかがう。

話は変わるが、以前のコラムでもご紹介したように、最近の中学受験では受験生本人が最終的に志望校を決めるご家庭が多いようだ。中学受験生の保護者アンケートを分析した結果、志望校の決定権が最も強いのは、受験生本人であると回答した保護者は、55%であった。過半数のご家庭で受験生本人が志望校を決定していることになる。ここは我が子に最終決定権を持たせながらも、保護者として我が子に最適な学校を志望校とすべく、保護者があらかじめ選んだいくつかの学校の中から選択させていると推測できる。

保護者の心理を考えると、受験生本人に志望校を決定させるメリットとしては、「我が子が自分で決めた志望校ならば、入りたい気持ちが受験勉強に対するモチベーションにつながる」ということが考えられる。志望校の最終決定権を受験生本人とすることは、我が子の受験勉強に対するモチベーションを向上させる。(また、不合格の際にこのことが本人の救いにもなる)。

ただし、我が子に志望校を自分で決定させると言っても、なんとなく選ばせるだけでは、それほどモチベーションを高めることはできない。それは、目標が自分にとって好ましいものかどうかがわからないからである。志望校を自分の目で見て「どうしても入りたい」という気持ちになれば、モチベーションは向上する。つまり、すばらしい先輩たちに重ねあわせた未来の自分を描いてみて、今の苦労(受験勉強)を納得した時、受験勉強に対するモチベーションは向上するのである。学校訪問を行う意義には、「我が子にあった学校」を選定または確認するためだけではなく、受験勉強に対する我が子のモチベーションをかきたてることもある。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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