学校訪問を行う意義 その1[中学受験]

実は中学校進学後に転校せざるを得ないケースが時折発生する。
そもそも学校案内を見ても、どのような学校なのか、なかなかわかりにくい。学校案内に、よくある質問と回答として「Q&A」を付けて努力している学校も近年は多く見られるが、それでも「学校案内は、どの学校でも同じようなことが書いてあって迷ってしまう」「学校案内は、抽象的なことが多く、どのように解釈すべきかわからない」という保護者の声を聞くことが多い。確かに、学校案内だけで学校を理解することは難しい現状がある。

それではどうすれば良いのだろうか。学校情報がないなかで志望校を決めるというのは問題が多い。中学受験生の保護者アンケートを分析した結果、志望校を決定するための情報源として学校説明会を挙げている保護者の割合は82%。しかも50%の保護者が最も重視すべき情報源としている。また、オープンスクール・文化祭・体育祭などの学校訪問は、72%の保護者が情報源としており、16%の保護者が最も重視すべき情報源としている。

就職と受験は試験形式では異なるが、採用試験であることは変わらない。難関大学を卒業し、大手有名企業に入社したにもかかわらず、1年もしないうちに辞めてしまった人から話を聞いたことがある。退職の原因は、単に仕事が合わないということだった。当然、なぜ、入社する前にそんなこともわからなかったのか?という疑問が生じる。彼が言うには、企業を調査する時間もないなかで、最初に受けた企業で、すんなり内定をもらえたので、あまり考えずに入社したそうだ。3年以内に離職する高い社員の特徴として、一生懸命に就職活動をしなかった人の割合が高いという。つまり、あまり一生懸命に就職活動をしなくても、簡単に就職が決まってしまった、学歴が高い人の離職率が高いのだ。

中学入試も同様だ。往々にして、偏差値が高くその学校にスムーズに進学したケースで問題が起こる。入学当初は、学校に慣れないこともあって、トラブルの一つや二つはあるはずで、ささいなことから学校がいやになるケースもある。そんな時、「あの時あれだけ調べたのだから、他に良い学校はないはずだ」いう自信を持って学校生活を送っていれば、段々と学校にも慣れてきて学校の良さもわかるはずだ。保護者も自信を持って我が子を支えることができる。オープンスクール・文化祭・体育祭・学校説明会に通って、愛着がわくくらい調べた志望校ならば、入学後に多少のことがあっても何より本人が冷静に対処できる。
学校訪問の意義は、学校情報を集めることだけではない。「これだけ調べて選定した志望校だから、我が子にとってこれ以上の学校はない」と保護者が納得し、受験生本人が了解するという心のプロセスに重さがあるのだ。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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