学校訪問を行う意義 その2[中学受験]

塾の先生から「知名度が高いからと、志望校を決定する保護者が多いようです」という話を聞いた。中位校でよくあるそうだ。他方で「偏差値や知名度だけで志望校を決定して大丈夫か」「我が子に合った志望校を選びたい」という保護者からの相談も多く受ける。

志望校の選択について、相談を伺っていると、知名度から話が始まっても、志望校は子どもに合うかどうかを気にする場合が多く、その逆のケースで子どもに合うかどうかから話が始まっても知名度の話が必ずと言ってよいくらい出る。そこが面白い。

ところで、偏差値や知名度で志望校を評価することは、それなりの合理性はある。人気が高い学校の偏差値は高くなるわけで、その意味で学校の総合評価と言うこともできるからだ。つまり、あたかも学校を構成している生徒・先生方・校舎・立地・学費・伝統・教育方針・校風等のさまざまな要素を総合的に評価した結果として表示されているように受け取られやすい。実際のところ偏差値が高い学校には、当然ながら受験学力の高い生徒が集まるので、生徒の学力の質という学校の評価を決定する大きな要因においても偏差値で計ることができるのかもしれない。
しかし、上記の意味で一般的には学校の評価が高くとも、一部の重要な要素が、決定的に我が子に合っていなければ意味がないのである。たとえ、我が子が偏差値の高い生徒が多い学校に入ったとしても、家庭環境が異なったり、生き方や考え方が違ったりする子どもが多ければ、良い感化を受けることができないばかりか、友人もできず、豊かな学生生活を送ることができないことになる。だからこそ、我が子に合った学校かどうか、学校情報の収集が必要になるわけだ。

偏差値・知名度か、「我が子に合った学校」か? どちらのアプローチでもかまわないが、志望校を決定するうえで大切なことが二つある。一つは、偏差値や知名度で志望校を選んでも良いが、偏差値や知名度はしょせん他人の見方だ。他人の評価に依存したままでは危うい。自分なりの評価がほしい。もう一つは、学校の要素のうち、少なくとも重要な要素については我が子に合っているかどうかを確認して志望校を決定すべきだ。その何が重要なのかはまさに保護者の価値観の問題である。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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