【回答:森上教育研究所】塾<その2>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。

成績が伸びません。転塾させるべきか迷っています

6年生で塾を変わるのは不利でしょうか?

成績が伸びません。転塾させるべきか迷っています

転塾しようかどうか迷っています。大規模でカリキュラムが早く進んでいる塾から、もう少し生徒一人ひとりに目が行き届く小中規模の塾に移ろうかと検討中です。入塾してから成績も平均すると伸びていません。本人は塾が気に入っており、塾のお友達もできたようで、楽しそうに通っていますが、親としては、成績が上がっていないことを考えると、塾のシステムと本人とが合っていないように感じます。転塾するなら新6年生のスタート時期となる2月が最後のチャンスかと思っています。本人を説得して転塾させるべきでしょうか?
一般的に、転塾することでメリットだけを考えがちですが、デメリットもあります。
デメリットとしては、
[1]子どもの学習環境が変わるために、慣れるまでの時間をロスすることが考えられます。
[2]また、転塾した塾で友達ができなければ、勉強に対するやる気を失うこともあるでしょう。
[3]さらに、転塾した塾のカリキュラムは、現在通っている塾のカリキュラム・教材と異なるわけで、最悪の場合、習っていない分野・単元が出てしまうことになる可能性があります。

メリットとしては、「転塾先の塾が生徒一人ひとりに目が行き届く指導をしてくれて、成績が伸びるかもしれない」という期待だけです。しかし、転塾しても塾が子どもに合うとは限らず、[1][2][3]から成績が下がってしまうリスクもあります。
「成績が伸びない」ということは、模試の偏差値があまり変わっていないということだと思います。偏差値は模試を受験した生徒の学力順位を数値化したものなので、順位が変わらないことになります。つまり、学力は伸びていないわけではなく、周囲の受験生と同じだけ学力は伸びていることになります。
「成績が下がっている」場合は、学力の伸びが周囲よりも少ないことになり、「成績が伸びない」とは大きな違いがあります。「成績が下がっている」のであれば、リスクを考慮しても転塾するメリットはあるかもしれませんが、そうでなければ転塾はデメリットが大きいので、慎重にすべきでしょう。

6年生で塾を変わるのは不利でしょうか?

小学6年生で中学受験のために塾に通い始めたのですが、塾のレベルが高くてついていけないようで、成績がなかなか伸びません。宿題も多くてイライラしています。塾が子どもに合っていないようなので、塾を変えることを考えていますが、この時期、転塾が子どもにとっていいことなのか悩んでいます。
もちろん個々に状況は違うと思いますが、一般論としては、小学6年生の途中で塾を変わるということは、お勧めできません。
個別指導に変わるのであれば問題はありませんが、それぞれ塾のカリキュラムが違うので、塾を変えると学習していない部分が出てしまいます。また、カリキュラムや教材だけでなく、先生やクラスメートも変わる環境の変化は子どもにとってはストレスになると思います。
5年生までに転塾をするのであれば、受験までの期間があるので、転塾した場合の環境の変化にも時間をかけて対処できますが、6年生の途中からでは時間的な余裕がありません。成績が伸びないことや多くの宿題によるイライラよりも、転塾した時のストレスのほうが大きいかもしれません。
どんな場合でも、何か変更をするとメリットもあればデメリットもあると考えなくてなりません。今回のケースでは、転塾することによるデメリットは予想がつきますが、メリットは転塾してみなければわかりません。
では、転塾しないで解決するには、どうしたらいいでしょうか。例えば、「宿題は自分でできるところまでやればいい」ということにして、子どものイライラを減少させ、根本にある成績が伸びない原因を追及し、解決策を講じると良いでしょう。
今回、成績の伸び悩みの解決策として6年生途中の転塾を考えたわけですが、原因はお子さん本人の中にある場合が多いのです。誰でも、成績が伸びないスランプの時期はあるわけで、原因は子どもによってさまざまです。子どものことをよく知っている塾の先生に相談してみるのも良いと思います。成績が上がっていけば、すべてが良い方向に変わります。

プロフィール



中学受験と私塾、中高一貫の中等教育と私学を対象とする調査・コンサルティング機関。私塾に『中学受験研究』、私学に『私学中等教育』を月刊で発行している。「わが子が伸びる親の『技(スキル)』研究会」を主催している。

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