説明文で前後関係やつながりが読み取れません その2[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答し、実際にアドバイスを実践した結果どうなったのか?という追跡結果もお届けします。


質問者
相談者:東京都 S・Yさん
学年:小学3年生
性別:男

第二回目の質問
小3~4の段階でどんな題材に取り組ませればよい?

第一回目の小泉先生の回答アドバイス、ありがとうございました。
テキスト探しに図書館へ行きました。
生物や気象の解説本を探したのですがなかなか適当なものがなく、結局「ファーブル昆虫記」を読解問題風にアレンジして、以下3パターンで問題を作ってみました。

第1回目は(1)と(5)を示して(2)(3)(4)を並べ替えさせるもの
第2回目は(2)と(6)を示して(1)(3)(4)(5)を選ばせるもの
第3回目はヒントなしで(1)~(4)の順番を考えさせるもの

第1回は順序がみつけやすいキーワードのあるものから始めました。「まず」「それから」「とうとう」といった簡単なものは迷うことなく並べることができましたが、「順番に並べ替え」のゲーム性だけが先行して、肝心の内容はあまり精読していない様子。「それ以外で何か順番の決め手になったのは何?」と聞いても「なんとなく」というあいまいな返事だったので、次は接続詞だけでは決められない問題を!と反省…。

第2回目は起承転結がある説明文だったのですが、(3)の冒頭に「なぜこんなことをする必要があるのでしょうか」という「転」の言葉があり、これがどこに入るのかでかなり悩んでいるようでした。そこで「じゃあまず、確実にまとまるところをくっつけてみたら?」とヒントを出したところで、コマの数が一致してなんとか正答にたどりついた感じでした。

第3回目は最後に来るべき要約文(4)を最初に持ってきてしまったことで、(1)の行き先に悩みました。説明文だと確かに冒頭で結論を言ってしまうパターンもあるのかもしれないな、と思うと、私もうまく説得ができませんでした。あとは指示語などの小さなヒントを元に順番を選びましたが、なるほどたくさんの説明文にあたって、さまざまなパターンに慣れていくしかないのかな、という気がしました。

3回とも、息子は読解問題というよりはカルタ取りでもやっているような雰囲気で楽しく取り組んでいました。
ただ、今回は「昆虫」という、息子が興味を持てるテーマの説明文をあえて選んでみたのですが、本番の受験に向けては小3~4の段階でどんな題材に取り組ませておけばよいのか、段階的にどんなバリエーションを増やしていけばよいか、を再度ご教示いただければと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

小泉先生の第二回目のアドバイス
お子さまの興味を大切にしつつテーマを広げる

初めてのトライでしたが、うまくいったようですね。お子さまが「カルタ取りでもやっているような雰囲気で楽しく取り組んでいました」というのは、大変良かったと思います。「まったく本好きになってくれず」「難しい問題になるとさらに文章嫌いが顕著になり」ということでしたから、とにかく説明文に楽しく親しむことがなによりだと思います。
さて今回の「段落ゲーム」(と呼びましょう)では、お子さまは三つのことを学んでいます。一つ目は、「説明文に慣れる」ということです。難しい文章であっても、何回か触れていくうちに親しみを覚えてくるものです。説明文特有の表現方法や説明の仕方など、慣れてくれば読みにくいものではないことに気が付くと思います。比較的短い文章から始めて、徐々に長くしていくと良いでしょう(最大でA4用紙1枚程度の分量)。

二つ目は、「文章の構造」について学んでいます。第1回目で「次は接続詞だけでは決められない問題を!と反省…。」とありますが、ここでの経験は大変重要です。お子さまは接続詞などの大切さや使い方を初めて実感されたのではないでしょうか? これは決して大げさな言い方ではなく、そういった実体験をすることは、大変有意義なことなのです。
また第3回目で、結論やまとめの段落を最初に持ってきたため、本来最初にくるべき段落の持っていき場所に困ったということでした。これも面白い体験だと思います。文章には「まとめ」を最後に持ってくる「尾括型」、最初に持ってくる「頭括型」(あるいは最初と最後にある「双括型」)があることを発見したことになります。もちろんここでうまい説明ができれば、それに越したことはありません。でもうまく説明できなくても、そんなに問題はないと思います。近い将来、塾あるいは問題集がきっちりとした説明をしてくれるはずです。大切なことは、その前に実体験をしたということです。さらに「指示語」や「話題の展開の順序」に注意することの大切さも、実感されると思います。

さて三つ目に学んでいることですが、それは「その文章の内容そのもの」です。お子さまは昆虫が好きということで、『ファーブル昆虫記』を選ばれたそうですが、とても賢い選択だと思います。そして何度かこの「段落ゲーム」をやっていくうちに、「へー、面白いこと書いてあるね!」と興味を持てる文章に出会える時が来ると思います。そしてその続きを、ぜひ読みたいと言い出すことになるかもしれません。その場合は、ぜひ原典を読ませてあげてください。そこまでくれば、お子さまの説明文や論説文嫌いもかなり解消されると思います。

最後に「本番の受験に向けては小3~4の段階でどんな題材に取り組ませておけばよいのか?」というご質問にお答えします。まず教材ですが、今回のようにお子さまが興味を持ちそうな本から適当なところを抜き出すのがベストでしょう。ただしかなり手間がかかると思いますので、そんな場合は市販の問題集の説明文や論説文を使用するのも良いと思います。小3なら小3の、小4なら小4の問題集を購入されて使用すると良いでしょう。ワープロで打ち直してあげれば親切ですが、そのまま(あるいはコピーして)使っても良いと思います。もちろん穴あき問題がある場合は、穴は正しい答えで埋めておいてください。
さてもう一つのポイントは、その文章の「テーマ」です。今回は「昆虫」でしたが、しばらくしたらそれに関連したテーマである「自然・環境」を選ぶと良いでしょう。さらに学年が上がったら、「日本人の自然観」など「文化・習慣」に関するテーマに広げるのも良いと思います。これらは中学入試には頻出ですが、なかなか難しいので5、6年生になってからで十分です。なお中学入試に頻出のテーマに関しては、拙著『中学受験 必ず出てくる国語のテーマ』(ダイヤモンド社)をご参照ください。

「段落ゲーム」によって、お子さまが説明文や論説文に興味を持ち、原典をどんどん読み、難しいテーマ、たとえば「言語・コミュニケーション」や「文芸論」に関する文章をなんとか読めるようになったら、お母さんとのゲームもそろそろ卒業ということになるかもしれません。そんな時は、最後に卒業試験をしてください。それは何かと言えば、「お子さまが問題を作って、お母さんが解く」というゲームです。もちろん簡単に解けるものではダメ。できればお母さんを困らせるものであり、しかも理論的に正しい並び方をお子さまが説明できるものでなくてはなりません。そこまで作れるようになれば、お子さまの説明的文章に関する国語力は、かなりのレベルに達したと言えるでしょう。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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