寮制学校 その2[中学受験]

さて寮制学校だが、前回取り上げた海陽学園(海陽中等教育学校)(愛知)設立以降、改めて注目され始めた様子がある。
というのも、首都圏で出張入試をするいくつかの寮制学校への入学者が海陽学園設立2006(平成18)年から伸び始めたのだ。出張入試は従来からお試し受験として手頃だったこともあって、受験して合格する小学6年生は多かったが、実際に入学する人数となると1けた台が多かった。
ところが海陽学園設立以来、進学者が2けた台にのった寮制学校がいくつも出たのである。筆者は従ってこれを「海陽効果」と呼んだぐらいである。
もちろん、本当のことはわからないし、原因はいくつかの要因が重なったに違いないが、やはり大企業が寮制学校をつくる、というので通常の私立学校の設立とは規模もインパクトも違う発信力があったろうし、寮制学校のイメージに好印象を与えた可能性は指摘してよいと思う。

なかでも、出張入試を以前から実施して認知度が高かった土佐塾中高等学校(高知)や、首都圏から近い佐久長聖中学校 高等学校(長野)などの入学者増ぶりは最も大きかった。
実はこの二校とも塾のつくった学校で、この1、2年では富山の片山学園も加わった。
塾のつくった学校というと、海陽学園など伝統校の教養主義と正反対の進学一本やりのように受け取られるかもしれない。が、その最も特徴的なことは中1・中2で丁寧に勉強の仕方を身に付けさせ、寮での生活を含めて親身になって子どもに付き合うところだろうと思う。
結果として入学時の相対的なレベルはそう高くない生徒でも、難関大学にそれなりに……というより、ワンランク上の結果を出す。地元の人の評判を聞くとその熱心さは「さすが塾ならでは」で、しかも結果を出す良さがある。

通学制の学校の場合、塾と学校の勉強がダブルスクールになって、かえって非効率になるケースが多い。寮制学校はその点ロスがないのが持ち味だ。具体的な寮制学校選択の動機を探ると、大都市周辺の郊外部に住んでいて通学制の学校に通学するには遠く、近くに良い進学校がない、というご家庭像が浮かんでくる。確かにそうした地域では中学受験への取り組みは概してスロースターターとなり、中学入試時点では、まだまだ磨けば光るはずの受験生が少なくない。
やはりこのように需給がマッチして進学が決まるのだが、見逃せないのは日々の生活習慣のところで、簡素で規則正しい生活を送るということを成長期にいかに確保するか、またそれがいかに難しいかという事情が根底にあると思う。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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