志望校選びのための「見る目」を養う[中学受験]

中学受験を決めているご家庭でも、それでは第1志望はとたずねると「まだ明確には決めていない」という答えが返ってくる場合がある。逆に、「第1志望をどこにしたら良いか?」と問われる場合もあるが、なかなか答えづらい質問かもしれない。もちろん質問している保護者としては、「今の成績で、どこを目指せば良いか?」というくらいの問いであろうが、それでも困る。なぜなら、今後の勉強の質と量によって、合格できる学校の幅は大きく変わるからである。しかも残されている時間が長ければ、可能性の幅はもっと大きくなる。
保護者の「目標設定」が明確にできていないと(つまり志望校が決まっていないと)、受験生本人の勉強に対する気持ちがぐらつく場合が多い。勉強はつらいものであるから、それをやり切るためには明確な目標と、その目標を達成する意味を知らせておく必要がある。

志望校をすんなり決められる場合もある。保護者が卒業した学校だから、お兄さんやお姉さんの学校だから自分も行きたいという具合に自然に決まる場合である。また他の人から「良い学校だ」と言われ、実際に文化祭などに行ってみて、その学校の生徒に声をかけられ「ここが自分の学校だ!」と心に決める場合もあるかもしれない。こういったいわゆる「一目ぼれ」タイプの学校選びは、迷うこともなく何か気になることがあっても「あばたもエクボ」的に思えることが多い。
逆に多くの「志望校予備軍」から何らかの基準を設けて選び出す場合は、迷うことが多いかもしれない。「お見合い」タイプと言ってもよいこの方法だと、いろいろ短所が目立ってしまい「ここだ」という具合になかなか選べなくなる。しかも良さそうなところはやはり偏差値も高いので、余計に「これが志望校!」と決められないのである。

志望校決定の基準は、「校風」「立地」「大学合格実績」「カリキュラム」「学費」などなどであろう。それらの情報を本から得るのはそれほど難しいことではないが、外から見ているとなかなかわかりにくいものも多い。やはりその学校に所属して、しばらくして、あるいは卒業してからその学校の良さや欠点がしみじみ感じられるものかもしれない。もちろん志望校を選ぶほうとしてはそれまで待てないだろうから、さまざまな受験情報の本を読んだり、人に聞いたりしてその学校の「校風」などに関するイメージを持っていただきたい。そして大切なことは、イメージを持ったうえで実際にその学校に行って、先生方の話を聞いたり、生徒の様子を見たり、あるいは校舎の状況を見たりしていただくということである。
たとえば男子校の学校紹介で「自由な校風」とあり、実際に学校に行ってみて、校舎が適度に汚れているのであれば「やはりそうか、よしよし」などと納得するのである。しかし窓ガラスが割れているのが目立つようであれば、「自由の行き過ぎ」を感じるかもしれない。大切なことは、このように実際に学校を訪問した時に必要な「見る目」を養うことであると思う。そのための準備として、イメージ作りのために情報を使うべきであろう。なぜなら「自由な校風」と書いてあっても、その受け取り方は千差万別であり、その学校の意味する「自由な校風」とは異なる場合があるからである。

人が集めた情報を鵜呑(うの)みにするのではなく、それを一つの基準にして、自分で確かめる。最後は保護者が、あるいは子どもがそれをどう見るか、つまり「好きか嫌いか」である。学校へは何回か足を運ぶべきであろうが、それと同時に「見る目」を持つことが大切なのである。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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