「面倒見の良い学校」考 その4[中学受験合格言コラム]

さて、そろそろ結論を急がなければならない。つまり面倒見の良い学校で保護者のかたがイメージされるのは既述したような個人の学業へのコミット(かかわり)を強めにするところ、ということになる。
それでいくと親は子育ての「面倒」なところは見ないでよい、という学校が、ここでテーマとなっている「面倒見の良い」学校ということになるのだろう。

たとえば信奉者の多い英米の全寮制学校(ボーディングスクール)がイメージに近いのではないだろうか。何しろ名門のボーディングスクールに入れるプレップスクールとなると、出生前から予約するということだし、卒業生は総じて名門大学に進学している。ただし、我が国の私学の3、4倍近い費用がかかる。そこへいくと我が国にあって、そうした進路保証の機能という点で近いのは、早稲田大学や慶応大学の付属や、東京大学と京都大学に30%程度合格させる難関進学校ということになる。しかしながら、ごく一部のそうした学校をのぞくと、そのような機能の実態的な保証がある学校はないだろう。かくして中堅の付属校や進学校にやむなく(?)代替として入学した以上は、この「面倒見」機能を求めることや切なるものがある。

ボーディングスクールは全寮制ゆえに学校外生活も含めて生活丸ごとの面倒を見るのだが、我が国では親がアフタースクールの面倒を見る。アフタースクールと家庭との間に通う塾は家庭のオプションであるが、そこのところを学校側のイニシアチブ(主導)で行うのが補習講座であったり、学校がかかわっている塾であったりということであろう。

ただその際には、学校の計らいや振舞いが高機能でないと、市中の塾を家庭のオプションでまかなったほうがより役立つし、逆に言えば低機能の学校イニシアチブに任せっぱなしにしていても、あまり効果を生まない。
さらに言えば、何が高機能で何が低機能か親が理解できるかどうか……というより理解できる親かどうか、ということもある。筆者など理系となると判断能力にはまったく自信がない。

そこで思うのだが、親の得意不得意や学校の信頼度により「面倒」を見てほしいか見てほしくないかが個人のオプションになっていて(それも年々変化するので年々更新にする)、また、どのように子どもの学業にかかわるか、ひとつの学校のなかに多様なパターンが用意され、それを家庭のイニシアチブで選べる……そんな理想が実現するように念じて稿をとじたい。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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