世界地図で「英語」を学ぶ 教科の壁を越えて「使える英語」を身に付ける授業

ご紹介するのは、東京都の小学校で英語を教えるAO先生です。ちょっと変わった経歴の持ち主で、幼稚園から大学まで、すべての学校で英語を教えたことがあります。そんなAO先生の目標は、聞けて、読めて、書けて、話せる英語、つまり「使える英語」を身に付けさせることです。
今回の授業は、小学5年生です。この年齢でAO先生が目標にするのは、「聞く力」を身に付けさせることです。

AO先生の授業は毎回、歌から始まります。「声に出し」「聞く」この2つが、ウオーミングアップになるからです。
授業は、先生はすべて英語です。「聞く機会」を少しでも多くするためですが、AO先生のように、ネーティブ並みの英語を話せる先生は少ないので、ある意味で特別な存在です。ただ、AO先生は、少しでも正しい発音を身に付けようと、レッスンに通い続けています。
教えてもらいたいと思うような先生は、人に教えるために、みんな陰の努力と工夫を重ねています。私が取材した人のほとんどは、旅行や散歩に行っても、「これ授業で使えないかな?」と思うそうです。そんな先生に出会えたら本当にラッキーです。

さて、取材した日は、歌が終わると、191という数字を取り上げ、英語で「この数は何?」と聞くことから授業がスタートしました。
子どもたちからは、すぐに「世界の国の数」という答えが出ました。ちなみに、子どもたちは日本語を話してもOKです。そして、世界の国の数は、前の社会科の授業で習ったばかり。AO先生はほかの教科で習ったことを生かすことを心がけています。つまり、子どもの中にある情報をもとに授業を組み立てているので、子どもたちは英語を聞くことに集中しやすくなるのです。

ここで、先生は、「世界の国の数を数えてみよう」と国旗の書かれた表を取り出しました。まずは、縦を英語で数えます。数字の読み方は、既に習っているので復習となります。縦は12。横は16でした。そして、12×16を求めます。

この掛け算も英語で話しながら、192という答えを導き出します。「でも、世界の国の数は191のはず?」と英語で投げかけると……なんとなく意味を察した子どもたちから「国旗を書いた紙にひとつの空きがある」という指摘が……。
そして、192—1=191という計算を英語で確かめます。

AO先生の英語の授業では、子どもたちは、すべて自分の中にある知識をもとに、先生の話す英語を聞くことになります。そこで、わかった気になれるのです。言葉を換えれば、子どもたちは、聞く必然を持って英語を耳にすることで、「英語がわかった!」という体験を積み重ねていきます。これが英語を学び続ける原動力となります。
よい「学び」をつくれる先生の共通点は、子どもたちに「自分が変われた!」という体験をさせていることです。
でも、そのために、先生たちはさまざまな技を駆使しています。
AO先生の場合は、教師の話す英語を子どもたちが聞き続けていられるように、話す速度に気を配ったり子どもたちが理解可能な英語を強調して話したりすること。言葉で理解できそうもないことは、図・絵・数字などを一緒に提示すること。さらに、表情・ジェスチャー・声のトーンの変化も豊かにするように心がけています。
この技は、ちょっと見ただけではわかりません。
これは、よい授業の伝承が難しい理由です。

このあとは、地図帳を使って、世界のことを学びはじめたばかりの子どもたちの状況に合わせた授業が展開されます。
世界の白地図を配り、国ごとに色分けしていきます。

日本は、赤
アメリカは、オレンジ
エジプトは、茶色
ブラジルは、緑
オーストラリアは、ピンク
モンゴルは、黄色

この時のポイントは2つ。

・友達と教え合いながら作業してOK
・先生は「どの国は何色で」を何度も繰り返す

これで、わからない子が、わかってくる感覚を味わえるのです。
そして、授業の最後に、先生は英語で「それぞれの国は何色で塗ったの?」と確かめます。
聞き、調べ、手を動かして、わかった達成感。
しかも、全員が「できた!」ことを体で味わえる授業です。

プロフィール


桑山裕明

NHK編成局編成センターBSプレミアムに所属。これまでに「Rの法則」、「テストの花道」、「エデュカチオ」、「わくわく授業」、「グレーテルのかまど」「社会のトビラ」(小5社会)、「知っトク地図帳」(小3・4社会)「できた できた できた」、「伝える極意」「ひょうたんからコトバ」などの制作に携わる。毎週のように学校を訪ね、たくさんの授業を見ている。

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