受験の下地作りに必要な愛情のかけ方は?[中学受験]

昔から子育ての極意は、「手をかけずに目をかけよ」と言われている。

しかしながら中学受験の場合は、そんなことは言ってられない。
知人のところでは、母親が山のような塾の宿題を整理し、子どもにそれをこなさせる役割に追われ、小学6年生の2学期ごろはへとへとに疲れているようだった。

そうした現実のなかでは、「どうやったら手をかけずに中学受験ができるのか」などと言ったら、「太平楽を並べるな」と叱られそうである。
評論家的に母子密着と言われようが、中学受験はそうしなくては一歩も進まない現実が、特に男の子に多いようだ。
ところで一方で「手塩にかけて育てる」という言葉だってある。
まあどちらかと言うと中学受験派は、こちらの子育てタイプが否応なく多くならざるを得ない。

いつも申し上げることだが、小学3年生、4年生という中学年は、本来なら母親がやっと子育ての手を抜ける時期なのである。
このあたりになると体も丈夫になり、熱を出したり、おなかが痛くなったりといった、細々とした故障も起きなくなる。

母親もそろそろ手を抜いて自分自身のことを構いたくなるころだが、残念なことにというべきか、この中学年がまことに子育てが最も楽しくおもしろいときであるし、遊ぶように学ぶことを身に付ける最大のチャンスなのである。

恐らく、この時期を逃せば中学受験の下地作りが難しいので、小学5年生、6年生で、手をかけ目をかけても満足な結果が出にくいという事実もある。

この前思春期にたっぷり愛情を注がれ、母子の一体感が強い子どもは、土地に十分栄養のある木のようなものでよく伸びるのだ。
ただし、この愛情というのがくせもので、栄養がありすぎる土地の木は弱々しいこともまた事実であるように、ベタベタすればよい、ということではない。

今はサクランボの出回る時期であるが、桜の木でも味のある実ができる木の花は実は美しくない。
一方で、ソメイヨシノのように美しく花の咲く桜は実が小さい。
つまり花があれば実は乏しく、実があれば花は芳しくないのである。
俗に言う「花も実もある」という育て方、人となりは植物においては難しいことであるし、人格の形成においてもなかなかないことである、という含意があるのではないだろうか。

そこで思うのは、やはりモデルや目標(戦前なら「君子」、英米なら「紳士淑女」)があってこそ、手のかけよう目のかけようも違ってくるはずだ、ということである。

目標がそこにないと受験そのものも、合格することばかりが目的と化して、花も実も危くなりはしないだろうか。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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