弛みにも注意[中学受験]

前回は「焦り」や「ステル」ことについて述べた。これらに続いて「科目間バランス」について考えていきたいが、その前に「弛(たる)み」についても一言述べるべきであろう。

たとえば夏休み前からの努力が実って、志望校の過去問で合格最低点が60%のところ、だいたい70%以上とれるようになったとしたらどうか。当然「これは合格できる!」という気持ちになる。もちろん試験はまだ先のことだから「気をゆるめるな」とか「コンスタントに勉強しろ」とか言われているはずなので、本人も弛(たる)んでいる自覚はない。しかし実際はどこかで「安心感」が芽生え、そして確実に緊迫感が不足してくる。安心した瞬間が、その生徒の学力のピークなのかもしれない。

理論的には試験の数日前に学力のピークをもっていくのが理想であろうが、これはなかなか難しい。もちろん試験が終わってからピークがきても意味がないので、試験に間に合わせるようにするのだが、あまり早すぎてはいけない。早すぎる学力のピークは、気持ちのバランスをくずす場合がある。くずれ始めるとどうなるかというと、勉強に集中できない状態になる。たとえば「今まで解けていたはずの問題が解けなくなった」という感じである。算数のように解法の糸口を見つける必要がある科目では、解法の方針の「ヒラメキ」感覚が大切なのだが、なぜか「ヒラメキ」がなくなるのである。国語などでも今まで面白いように頭に入ってきた文章が、なかなか入らなくなっているといった状態である。もちろんこのような状態は、ある程度の期間があれば元に戻ることは可能だ。たとえば算数のコツを取り戻すには、10日もあれば十分であろう。ただし気が付いたら試験直前だったという場合は困りものであり、一番危険なのは実は正月前後であると思う。

「元旦くらいは良いだろう」ということで勉強がストップして、生活のリズムが乱れる可能性は大いにある。もちろん一日だけのことであれば気分転換とも言えるので問題はないが、ポイントはその後であろう。つまりダラダラと弛(たる)んでしまい、受験生活のパターンを取り戻そうと気が付いたら、すでに年も明けて10日もすぎている。そろそろ1月中旬の試験が始まろうとしているが、なぜか調子が出ない。そして「試し受験」で受けたはずの試験でまさかの失敗をし、そんな気持ちを引きずったまま本番の試験に突入、立て直すこともできずズルズルと進んでしまうのである。こういった悲劇は毎年どこかで起こっているから、ぜひとも注意したい。特に1月中の試験が本命である人は、正月のうまい過ごし方を心がけたほうが良いだろう。

焦らず、弛(たる)まず、志望校の入試日に向けて粛々と自分を磨いていく。気持ちをコントロールするのはなかなか難しい作業であるが、ご両親のバックアップが光る分野である。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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