家庭の事情を優先する学校選び 〜親の事情に優先する子どもの事情〜

 親の事情の中で取り上げなかったものに、何といっても親の見栄という点がある。せめてこれこれの学校に入っておいてほしい、という願いでもある。

 しかし、そう万事うまくいくものでもない。不本意でも進学させなくてはならない場合がある。中学受験でいちばん良いのは親の強いイニシアティブがとれることであり、いちばん困るのは本人の心身がその分、まだ本心から作動しない点にある。

 したがって不本意な結果になるケースの多くは、子どもの能力以下の学校しか選択できなかった、という思いが強い。本当ならもっと上に行けたのに、と。

 そこで不本意進学の場合のよいシナリオは、公立中学よりましであることにとりあえず満足して次の目標に早く切り替えることだ。次の目標というのは高校受験でも大学受験でもなくて、新しい親子関係の構築だ。

 それまでのように親主導でやれるのは、中1の夏休みくらいまでである。もはやその後は本人の自立を促すことに専念したい。とは言っても、親というものは度し難いもので、子どもが反抗的な態度を示し始めて、初めて変化に気付きはするもののだからと言って態度を変えて接する、ということが難しい。 

 しかしもはや子どものほうは、反抗しようが表立って態度に表さなかろうが、もはや親とは別人格を形成し始めている。それが年頃の子どもというものである。

 したがって親の戦略としては、兄弟姉妹の力関係の均衝を利用するとか、学校のクラブなどの仲間関係を利用するとかして、情報をまず仕入れる体制を作り(情報が入りにくくなるケースが多い)、効果的なポイントで親の愛情を示すには、いつどの場面が良いかのタイミングを計っておきたい。

 そのためには漫然と親をやっていくわけにはいかないから、子どもとのコミュニケーションができる手法を開発しておくことだ。そのようにして親子間の緊張を交えながらも要所要所での親の交渉力を確保していくことが望ましい。

 一方で、どこかの時点でその中学から系列の高校に行くことにするのか、高校から出るのかについて見極めるタイミングが大事であることを常にシグナルを出しておくことである。

 ともかく、これからは親の主導でなく、本人の主導だ、ということを親がしっかり納得することである。親は介添え役でしかないということ、もはや口に出し、背中を押してやることくらいが親の務めだと。親の事情でとても勉強をみてあげられない、というようにもしておきたい。子どもの事情は思春期という事情をどう織り込むかという親の事情に他ならない。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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