英語教育で大きな都道府県格差が明らかに

文部科学省の2015(平成27)年度「英語教育実施状況調査」で、中学生と高校生の英語能力に都道府県格差があることが明らかになり、マスコミなどで大きな話題となりました。しかし、調査の内容をよく見ると、都道府県格差があるのは子どもたちの英語能力だけでなく、英語教員の英語力や英語の授業方法などでも格差があることがわかります。子どもたちの英語力の向上に向けて、都道府県格差の是正が求められそうです。

政府の第2期教育振興基本計画は、中学校卒業段階で「英検3級程度以上」、高校卒業段階で「英検準2級程度以上」の生徒の割合を、それぞれ50%とする目標を掲げています。ところが、同調査によると、目標と同程度の英語力を持つ子どもの割合は、中学校で36.6%、高校で34.3%しかないうえに、都道府県ごとに大きな開きがあることが問題となっています。

英語教員の英語能力、英語の授業方法などに関しても、都道府県格差があります。同基本計画では、英語の教員について「英検準1級以上等」の英語力を有する教員の割合を、中学校では50%、高校では75%とする目標を掲げています。しかし実際に目標を達成している教員は、中学校で30.2%、高校でも57.3%しかいません。さらに都道府県別に見ると、高校教員の目標達成者の割合は、トップが福井県の86.6%、次いで石川県の81.0%、香川県の80.8%などに対して最低は千葉県の39.2%で、都道府県間で倍以上の差があります。中学校教員も、福井県の51.7%、富山県の48.7%などに対して、最低は岩手県の14.6%で、やはり3倍以上の格差がありました。

英語の授業方法を見ると、授業を「おおむね英語で行っている」と「半分以上を英語で行っている」を合計した割合は、高校教員で49.6%(「コミュニケーション英語I」の場合)、中学校教員は54.8%(第3学年の場合)でした。ところが、ここでも都道府県別に見ると、コミュニケーション英語Iを担当する教員のうち、半分以上を英語で授業しているという高校教員の割合は、1位が岩手県の85.3%、2位が山梨県の84.8%、3位が兵庫県の82.0%などに対して、最下位は和歌山県の19.7%となっています。中学校教員で第3学年の授業の半分以上を英語で行っている者の割合は、上位が秋田県の92.3%、石川県の78.1%などに対して、低かったのは大阪府の32.9%、奈良県の22.8%などで、トップと最下位の間には約4倍の開きがありました。

興味深いのは、これらの格差が必ずしも子どもたちの英語力の差となっていないことです。たとえば中学校で「英検3級以上程度」の生徒の割合が最も多かったのは千葉県の52.1%ですが、「英検準1級以上等」を取得している中学校教員の割合は30.3%にすぎませんでした。

それでも英語教員の英語力や授業方法などで都道府県による格差があるのは、やはり好ましいことではないでしょう。都道府県によってさまざまな事情があることは確かですが、子どもたちの英語力向上のために英語教員の研修の充実、授業方法の改善など、都道府県格差の解消に向けた方策が強く望まれます。

  • ※平成27年度「英語教育実施状況調査」の調査結果
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1369258.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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