今後の日本の英語教育は「発信」と「対話」がカギ 専門家が考察
大学入試の英語は「聞く・話す・書く・読む」の4技能化が検討されているが、世界の言語教育は「やりとり・対話」を含めた5技能がトレンドだ。そこで、ベネッセ教育総合研究所の主任研究員である加藤由美子氏に、シンガポールで開催された言語教育の国際セミナーを振り返り、日本と世界の英語教育の今後を語っていただいた。
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東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)という政府間組織のもとに、東南アジア地域で言語教育の中枢を担うRELC(地域言語センター)があります。その本部のあるシンガポールでは、毎年国際セミナーが開かれています。今回のテーマは、「21世紀の言語教室での批判的能力(CriticalCompetencies)」。言語(主に英語)力の育成を通じて「批判的に思考する力」を育てるということです。
ケンブリッジ大学教育学部のニール・メイサー教授による「教えること・学ぶことに効果的な対話の創造」という講演は印象的でした。メイサー教授は‘Thinking Together Project’において、日本を含む各国で研究・実践を進めています。「対話」を表面的な「やりとり」(interact)で終わらせずにそこで、「共に考える」(interthink)にまで持っていくことで、子どもを教えること・子どもが学ぶことの質を高める、という考え方です。
生徒の対話を促すために教師がどんな働きかけをするべきか。メイサー教授が挙げたポイントをご紹介しましょう。
(1)教師は生徒よりたくさん話さず、できるだけ生徒だけで話していけるように促す。
(2)Yes/Noではなく、できるだけ5W1H(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように)で答える質問をする。
(3)はっきりまとまっていなくても、とにかく意見を言ってみるように促す。
(4)議論の中で何らかの誤解が生じていたら、その誤解について説明や解釈を加える。
(5)小グループでのよい議論の内容を全体に伝え、他のグループも参考にできるようにする。
(6)生徒たちが経験していそうなことを、現状の議論につなげて話す。
日本の英語教育も、この「発信型」+「対話型」授業へのシフトを目指しています。今後は、英語の教師には、難しい説明を英語で行える力ではなく、「生徒に英語をうまく話させる技術」が求められるでしょう。
出典:英語5技能の時代に育てる「21世紀型思考力」とは?【前編】 -ベネッセ教育情報サイト